米有名ブログサイト「ハフィントン・ポスト」(ハフポ)と朝日新聞社との合弁でスタートした「ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン」開設から1か月経ち、失速ぶりを指摘する声が増えてきた。
独自記事ではない外部からの記事の配信が目立つ上に、市況のニュースを大きく取り上げる割には続報が乏しいといった、「ちぐはぐ」ぶりを指摘する声もある。
アクセスは開設直後の半分程度?
サイトは2013年5月7日にオープン。ある程度はサイトの方向性も安定してきたようだが、アクセスは伸び悩んでいる様子だ。ウェブサイトのアクセス状況を推計するサイト「アレクサ」によると、サイト開設直後は多くのアクセスを集めた模様だが、5月中旬以降は開設時の半分以下で推移している。
サイトでは、検索エンジンでヒットする説明書きで、
「ニュース速報まとめと、有識者と個人をつなぐソーシャルニュース」
とうたっており、独自ニュースは必ずしも多くない。
例えば6月12日17時時点で、トップページで一番大きい扱いになっている「尖閣に関する米文書見つかる」という記事は、トップページだけ見ればハフポによる新発見のように読めるが、実際の記事の内容は「文藝春秋」7月号に掲載された記事「スクープ 尖閣領有 アメリカは日本を裏切った」をなぞり、最近の中米関係について説明を追加したものだ。米国でのやり方を踏襲したともいえるが、これが利用者の関心を引きつけているかどうかは疑問だ。
さらに、こうした記事の本数もそれほど多くない。「ブログ記事」も目玉のひとつに掲げており、安倍晋三首相をはじめとする著名人を含めて70人以上が参加しているが、実際に更新されているブログの記事数は1日に5本程度だ。
「こんなもんロイターのサイトいって読めばいいだけです」
また、ヤフーのリアルタイム検索でハフポが話題になった回数を調べてみると、5月15日にはサイト立ちあげ関連の話題で300件以上ヒットしたが、5月25日以降は100~50件。やはり同様の傾向だ。
だが、6月11日には、書き込みの数が急激に増えている。皮肉にもこれは、アルファブロガーの山本一郎氏が、
「ハフィントンポストとかほんと何だよ。朝日新聞は目を醒ませよ。」
とハフポをけなす論評記事を掲載したのが理由だ。山本氏は、ロイター通信から配信した市況記事を大きめに掲載していることを、
「こんなもんロイターのサイトいって読めばいいだけですよね。他にも経済や市場の記事はいっぱいあるし」
と非難。7月16日には、松浦茂樹編集長と「LINE」の田端信太郎氏の対談イベントが計画されているが、このことについても
「『ほうほう凄いですね。で、どれだけアクセスあるんですか』とか『なるほど、そういう仕組みを考えているんですね、素晴らしい。で、どれだけ読まれているんですか』などと壇上で煽られて寒い空気が充満する、そんなセッションになること請け合いじゃないですか」
と冷やかした。
要は「売り」が何なのか、はっきりしていないのだ。
ただし、ハフポでは、「ネガディブな意見が淘汰され、前向きなコメントが集約される」仕組みの実現を目標として掲げている。この点では、「ハフポはコメント欄の状況によって評価されるべき」だとの考え方もできる。例えば、上田秀明・人権人道大使が「シャラップ!」と叫んだことを報じる記事には多くのコメントがついているが、ヤフーなどに比べると「荒れ具合」が少なくも見える。
ただ、日本の今の「アクセス至上主義」的な傾向からみると、こうした点だけで媒体評価が高まるかは疑問だ。