プロ野球で使われている「統一球」で、驚くべき事実が発覚した。ボールの仕様が今季から変更されたにもかかわらず、日本野球機構(NPB)が事実を公表せずに選手側からの追及でようやく認めたのだ。
導入にあたって「国際大会に対応するため」との理由が掲げられた統一球だが、結局は米大リーグで使われているボールとも違う独自仕様。「飛ぶ、飛ばない」で選手たちを翻弄する統一球の存在意義とは何なのか。
本塁打が少ないと面白くないから仕様変更?
「今年のボールはよく飛ぶ」――。シーズン開幕以降、プロ野球を巡って飛び交っていた「ウワサ」は事実だった。NPBは2013年6月11日、日本プロ野球選手会との事務折衝で、今季から統一球に変更を加えた事実を認めたのだ。下田邦夫事務局長は報道陣に「昨季は球の反発係数が下限の数値を下回ることが多かったため、既定の数値に収まるよう調整した」との趣旨を話したという。
問題なのはNPB側が、ボールの仕様を変えたのに今まで事実を認めてこなかった点だ。しかも、メーカー側に対しても「変わっていない」と答えるよう要請していたという。スポーツジャーナリストの菅谷齊氏は、「ダンマリを続けていたのは前代未聞。今の時期に明らかになったのは、NPBが何らかの事情で『隠し通せない』と観念したのでしょう」と指摘する。
4月7日は全5試合で17本の本塁打が飛び出し、「統一球導入後最多」と日刊スポーツが報じた。2012年シーズンは1日10本塁打以上が9日間しかなかったが、今季は開幕わずか10日目ですでに3日間を数えていた。6月10日までに、横浜DeNAベイスターズのブランコ選手は既に23本塁打。昨季のセ・リーグ本塁打王バレンティン選手(東京ヤクルトスワローズ)がトータルで31本だから、いかにハイペースかが分かる。菅谷氏は「本塁打があまりにも少ないと観客にとっても面白みが減る。その点を考慮したのだろう」と変更の意図を推測する。
統一球が導入されたのは2011年。それまでは12球団が個別にメーカーと契約、発注していた。規定の範囲内とはいえ、複数メーカーが製造したボールの仕様は微妙に違う。飛距離を左右する反発係数は上限と下限の範囲内に収まればよい。「例えば強力打線の球団は、『飛ぶボール』をホームゲーム用に準備すれば有利です」(菅谷氏)。不公平感をなくす意味で、加藤良三コミッショナーが音頭をとり、メーカーを1社に限定して全球団共通のボールの使用を提案した。ところが導入後、統一球そのものが従来と比べて飛ばないボールだとはっきりしたのだ。