1日のうちに激しい値動きを繰り返す日本株。株を持っているか、売るのかの判断で収支が変わる「ギャンブル相場」に、個人投資家はもうなす術がない。
「恐怖のアベノミクス相場 素人は退場すべし」の見出しが躍った2013年6月10日発売の週刊現代に、「その通り」と思った個人投資家は少なくないだろう。
わずか2週間で3000円急落
前日比1143円の下げ幅を記録した2013年5月23日以降、5月30日の737円安、6月3日の512円安、6月5日には518円安と、この2週間に株価は年初来高値の1万5942円60銭から約3000円も急落した。
「アベノミクス」への期待感から一本調子で上昇してきた株価だが、いつかは下がる。その潮目が5月23日で一気に変わったようだ。
まさに、「恐怖のアベノミクス相場」(週刊現代)。株式市場は大きく動揺し、「素人は退場すべし」との指摘にも、個人投資家は「もっともだ」と思ったはず。ところがその記事が公開された6月10日には一転、今度は前日(6月7日)に比べて636円67銭も急騰し、終値は1万3514円20銭で引けた。
11日の終値は1万3317円62銭。196円58銭安と、また下げた。これほどメリハリがある相場に「大喜び」するのは、個人投資家でもいわゆるデイトレーダーくらいだろう。株式投資の初心者でも儲かるような、一方的な上げ相場から、プロでも難解な相場へ豹変してしまったようだ。
乱高下の原因は、いくつがある。一つは、安倍首相の成長戦略第3弾が期待外れだったこと。キーワードを「民間活力の爆発」と強調したが、法人税の減税や大胆な規制緩和など市場が求めていた政策には遠く、「失望売り」が広まった。6月5日の株式市場は、終値で前日比518円安の1万3014円だったが、13時から場が閉まる15時までの2時間で、高値から約700円も暴落した。
個人投資家は「個別の銘柄で、じっくり構える」
もう一つが、海外ヘッジファンドなどによるコンピューターによる高速売買とされる。あらかじめ組んでおいたプログラムに従って、コンピューターが自動的に売買するため、売りが売りを呼ぶような激しい値動きに陥りやすい傾向にあるという。
そんな値動きの激しい相場は、個人投資家にはわかりづらく、取引しづらくなることはある。「アベノミクス相場」は、このまま個人投資家の出番がなくなるのだろうか――。
経済アナリストの小田切尚登氏は、こう説明する。
「個人投資家は、平均株価が急騰、急落すると、つい慌ててしまうことがありますが、本質的にはじっくりと中長期的に構えて投資したほうがいいと思います。個別の銘柄を調べて、勉強して、見極めて投資するスタイルですから、平均株価が動いても一喜一憂しない。たとえば、平均株価が下落していても個別の銘柄をみると下げ幅は違いますし、銘柄によっては上がっているものもあります。そういった細かい買い方ができるのが個人投資家です」