「中国・上海市を流れる黄浦江に、大量の豚の死骸が漂流している」―2013年3月に出たこんな報道は、全世界に衝撃を与えた。
あれから3か月、「豚漂流」問題はまだ終わっていなかった。「化学溶液で豚の死骸を溶かして川に流した」という疑惑が新たに浮上しているのだ。
「無公害で病死豚を処理できる。浄化して流してるから大丈夫」
「ラジオ・フリー・アジア」中国語版が13年6月7日、ニュースサイト「華声在線」の先般の報道として伝えたところによると、湖南省長沙市の住民が、この地域の養豚場が豚の死骸を強アルカリ液で溶かし、それを湖南省最大の川・湘江につながる川に流したと告発した。中国では通常、豚の死骸は焼き払うか地中深く埋めて処理している。
当該の養豚場とはコンタクトが取れなかったようだが、この地域の他の養豚場の責任者が、強アルカリ液で豚を溶かして流しているのは事実。だが、放流する前に汚水を浄化している。しかもこの方法は無公害で病死した豚を処理できる方法でもあるので、ここ何年もこうして豚を処理してきた、と話したという。
広州市第一人民病院の医師・曽軍氏は取材に対し、「病死した豚は多くの菌を持っていて、強アルカリ液で全て殺菌されるとは限らない。また、多くの病死した豚は抗生物質を服用しているため、抗生物質も川に流れることになる。そして強アルカリ液が人体に危害をもたらす」として、川の汚染と地域住民の健康に警鐘を鳴らしている。
肉は溶けても骨が残る?
強アルカリ液は動物の体を作るタンパク質を分解するため、体を強く腐食させる性質がある。日本では体を溶かすほどの強アルカリ性の廃液は特別管理産業廃棄物に指定されており、中和や焼却など専門的な方法で処分される。そのまま排水溝へ流すなど言語道断だ。
豚を1匹溶かすにはかなりの量の液が必要と見られ、それだけの強アルカリ液が川に流れたとなれば人体への影響は免れないだろう。
ただ強アルカリで肉は溶けても骨は残るため、そのまま液体を排水溝に流すということは難しいと思われる。中国の養豚場で本当に「病死した豚を強アルカリ液で溶かして流した」かについては疑問も残る。