体重が武器にならず、かえって動きが鈍くなる
大相撲とブフでは、力士に求められる能力も違いが出てくる。富川氏はJ-CASTニュースの取材に、「大相撲では立ち合いが勝負の行方を左右するので、瞬発力が重要。一方ブフでは組み手争いから長時間戦える持久力が欠かせません」と説明する。
また大相撲では、ぶつかり合ったり押し出したりする際に体重が大きな武器になる。白鵬は150キロ台で、幕内力士の平均体重は160キロに達している。これに対してブフの場合は「100~120キロの力士が最も活躍しています」(富川氏)。土俵がないため体重を生かした攻めが必ずしも有効でなく、かえって動きが鈍くなったりスタミナを消耗したりする原因になりかねない。
あくまで仮定の話だが、白鵬が今のコンディションのままブフに挑戦したらどうなるだろうか。富川氏は「もちろん実力面では申し分ありません。ただ(大相撲のように)一撃で相手を倒せず持久戦に持ち込まれたら、横綱といえども苦戦は免れないでしょう」と話す。複数のスポーツ紙によると白鵬は、6月上旬にモンゴルに帰国した際にブフの稽古に参加したが、「勝つのは難しい」「全然違う」とコメントしていた。勝手が違う競技であることは百も承知のようだ。
だが一方で、「例えば白鵬関がナーダム(ブフの全国大会)の1か月前から現地で特訓を積めば、優勝できるかもしれません」と富川氏。実際には2か月に1度の本場所に全国巡業、各種イベントと予定が詰まっているうえ、毎日の稽古はおろそかにできない。角界の顔である横綱が、本業以外の理由で長期間不在にするのを相撲協会としては黙認するわけにはいかないはずだ。現実的に考えて「モンゴルでの集中特訓」は難しそうだが、日本とモンゴル両国で白鵬が「ダブル横綱」になる姿を見たいファンはいるだろう。