大相撲の横綱・白鵬が母国で開かれるモンゴル相撲の大会に出場する意向だという。7月の名古屋場所後、父の出身地での大会に照準を合わせているそうだ。
モンゴル相撲の正式名称は「ブフ」で、地域によってルールや作法に違いがある。大相撲では優勝25回を誇る白鵬だが、経験の浅いブフでは戸惑うかもしれない。
モンゴルと内モンゴルではルールや作法に違い
白鵬が報道陣を驚かせた。2013年6月10日の朝稽古が終わった後に、7月下旬にモンゴルで開かれるブフの大会に「出ようかな」と意欲を示したというのだ。父ムンフバトさんの出身地で開かれる県大会で、大相撲名古屋場所の千秋楽から数日後に予定されている。ムンフバトさんはモンゴルの全国大会で何度も優勝している名力士だ。
白鵬が県大会に出場して優勝し、さらに全国大会でも頂点を極めれば、大相撲の現役力士としてはもちろん初の快挙となる。もっとも、どこまで真剣に出場を視野に入れているかは分からない。本気で「参戦」となれば、前例のないケースに日本相撲協会がどう対応するかは注目だが、もし白鵬が県大会レベルであっさり敗退でもしたら大相撲の威信にかかわると心配する声も出ている。
日本では「モンゴル相撲」とひとくくりにされるブフだが、実際はかなり奥が深い。「モンゴル・ブフ・クラブ」のウェブサイトによると、土俵がないのが大相撲との大きな違いで、寄り切りのような技は決まり手にならず、勝負がつくのは投げや足技が中心となる。両力士が離れたところから立ち合いでぶつかり合うのではなく、組み手からスタートするのも特徴だ。
地域によって異なるスタイルのブフが存在しているが、主流はモンゴルの「ハルハ・ブフ」と、中国・内モンゴルの「ウジュムチン・ブフ」。ハルハ・ブフでは力士が入場時に両手を高々と掲げて、まるで鷹が翼を羽ばたかせるようなポーズをとる。足を取る技が認められ、頭や背中、ひじ、ひざが地面についたら負けだ。一方ウジュムチン・ブフでは、全身を左右に大きく揺らす「獅子の舞」で入場し、会場を右回りに3周するのが作法。勝敗も、足の裏以外の体の部位が少しでも地に触れたら決まる。衣装も双方で随所に違いがみられる。
ブフに詳しく、自身も力士経験のある日本ウェルネススポーツ大学准教授の富川力道氏は、「モンゴルや内モンゴルでは、子どもたちは物心ついたころからブフに親しんでいます」と話す。近年では女性力士も誕生しており、競技人口は増えているそうだ。