2013年6月8日に開票が行われた「AKB48 32ndシングル選抜総選挙」で、HKT48の指原莉乃さん(20)が15万570票を獲得し、センターの座に輝いた。
これまでの最高得票数は11年に前田敦子さんが獲得した13万9892票だったが、これを大きく上回って指原さんの得票数が過去最高となった。驚異の数字だが、ここまで票数を伸ばした要因は何だったのか。
大分市「職員や市民に投票は呼びかけていない」
指原さんといえば12年6月、前回総選挙直後の「元カレスキャンダル」がきっかけとなってAKB48からHKT48に移籍した上、バラエティー番組でもスキャンダルを積極的にネタにしていることもあり、「お騒がせ」「ヨゴレ」のイメージが強い。
そんな指原さんがアイドルグループの頂点に君臨した、という事実をなかなか受け入れられないファンも多く、インターネット上では「一部の層の大量投票があったのでは」、特に「大分市からの票がかなりの割合を占めているのでは」といううがった見方が出ている。
指原さんは大分市出身で、市の観光大使も務めている。釘宮磐市長が13年4月9日、市公式サイトの日記で、指原さんの選抜総選挙立候補に触れ「今回もしっかりと応援していきたい」と書いていたことや、釘宮市長が投票を市職員や市民などに広く呼びかけていくとした一部報道もあり、何らかのバックアップがあったのではないかというのだ。
ところが大分市に問い合わせたところ、「選抜総選挙について指原さんを特に応援したという事実はない」との答えが返ってきた。日頃から指原さんの活動を応援はしているが、市職員や市民に投票を呼びかけるといったことはしなかったという。
開票当日はフジテレビと中継がつながっていたため、釘宮市長をはじめ、ファンが集って指原さんの1位を祝福していたが、その後は特に町を挙げて盛り上がっている様子も見られないとのことだった。
「アイドル」というより「人気のテレビタレント」
ならば、15万票はどのようにして生まれたのだろうか。「AKB48ヒストリー~研究生公式教本~」などの著書があるオタクジャーナリスト・篠本634(しのもと・むさし)さんに話を聞いた。
篠本さんは「熱狂的ヲタが1人で大量投票」しただけではなく、「多くのライト層が投票した結果」と見る。AKBにはもちろん熱狂的なファンも多いが、「人気者が好き」というライトでミーハーなファンもかなり多い。前田敦子さんがメンバーだった頃は多くのライト層が前田さんに投票していたが、前田さんが卒業し、前回はその票が色んなメンバーにばらけてしまった。
しかし前回選挙後に指原さんにスキャンダルがあり、離れていった熱狂的なファンも多いが、それをきっかけに新しく指原さんに興味を持ったライトなファンもかなり多いという。指原さんは多くのバラエティー番組に出演し、自身のスキャンダルも持ちネタにして、いまや「アイドル」というより「人気のテレビタレント」だ。そんな指原さんが「1位だったら笑うよね」という好奇心で、ライト層がこぞって指原さんに投票しただろうと見ている。
また、HKT48の他メンバーのファンからの応援もあっただろうという。HKTはここ1年でファンがかなり増えたが、指原さんがメディアで色んなメンバーの魅力をPRしたことがきっかけとなった人が多い。HKTファンにとっては、指原さんはAKBでいう高橋みなみさん、NMBでいう山本彩さんのような存在だそうだ。例えば投票権を5票持っているHKTファンが「推しメン」に4票投じるとしたら、残り1票は指原さんに入れるということも起こっていただろう、と話していた。