「グラビア写真と同じくらいのきめの細かさ」を実現
4Kをも上回る高精細のスーパーハイビジョンは、NHK放送技術研究所のウェブサイトに概要が載っている。「あたかもその場にいるような臨場感」「グラビア写真と同じくらいのきめの細かさ」を実現し、100度の視野角で見られるという。専用のカメラやプロジェクター、ディスプレーの開発も進めてきた。
4Kやスーパーハイビジョンと技術の進歩は望ましいが、商用サービスの開始時に十分な映像コンテンツがそろうだろうか。3Dテレビでの「つまずき」の再現が心配だ。またテレビ受像機は地デジ移行前に「買い替え需要」が一斉に高まったが、その数年後に4K、さらにスーパーハイビジョンと短期間で新方式が導入されても、決して安くない高画質テレビに変えようとするか疑問だ。
「また買い替えか、のひと言に尽きます」と話すのは、上智大学文学部新聞学科の碓井広義教授(メディア論)。J-CASTニュースの取材に、4Kやスーパーハイビジョン対応型のテレビが、一般家庭には容易に普及しないとの見方を示した。テレビの主要コンテンツは、情報と娯楽。ニュースのような情報は速報性が重要だが、高画質である必要はない。娯楽も「クイズや、お笑い芸人のバラエティー番組をスーパーハイビジョンで見たいと思う視聴者がいるでしょうか」。ドラマやスポーツ、映画では効力を発揮しそうだが、それでも新型テレビが「価格破壊」でも起こさない限り、購入間もないデジタルテレビから「超高画質」に乗り換える気にはならないだろうと碓井教授は考える。
コンテンツを提供するテレビ局も、NHKやキー局に比べて資金が潤沢でない地方局にとっては負担が大きいと指摘。ようやく地デジ対応が済んだばかりなのにスーパーハイビジョン導入でカメラをはじめとした機材の総入れ替えとなれば、莫大なコストがかかり経営体力がもたないというわけだ。
碓井教授は、映画館の大型スクリーンや街中に設置されるデジタルサイネージのような「パブリックな場面」なら、4Kやスーパーハイビジョンといった鮮明な映像を流す価値はあると話す。技術開発を進めていくのも賛成だ。だが「1960年代の白黒からカラー、2011年のアナログからデジタルのような家庭での『テレビ総入れ替え』を今の時期にまた進めよう、というのは違和感があります」とこたえた。