円安・株高をもたらした「アベノミクス」。その効果が「早くもはげ落ちた」――。そんな声が聞こえてきそうなほど、株式市場も為替相場も激しい乱高下が続いている。
東京株式市場は2013年6月7日、日経平均株価が3日続落。一時は2か月ぶりとなる1万2500円台まで下落した。つい2週間前には「株価2万円」などと気勢が上がっていたのがウソのように、いまでは「どこまで下がるのか」心配になってきた。
早ければ、「来週にも落ち着く傾向にあります」
6月7日の株価急落のきっかけとなった円相場は、前日のニューヨーク外国為替市場で一時95円90銭近辺と約1か月半ぶりの円高水準に急伸。その流れを受けて、東京市場でも11時すぎには一時1ドル96円50銭近辺と、前日17時時点と比べて2円76銭の円高・ドル安となった。
それにより、業績への期待感が後退したトヨタ自動車やホンダ、キヤノンなどの輸出関連株が売られ、鉄鋼株や海運株も軟調。東証1部銘柄の9割強が下げる、ほぼ全面安の展開となった。
株価は5月15日に1万5000円を突破。5月20日発売の週刊現代(6月1日号)では「アベバブル この夏、株価2万円の攻防へ」の見出しが大きく踊り、ある証券会社幹部の証言として、「1万5000円で終わる相場ではありません。大相場のときには、ここからさらに短期間でググッと急上昇していくと断言できます」と、意気軒昂なようすが報じられていた。
ところが、その3日後の5月23日には年初来高値の1万5942円60銭から大暴落。終わってみれば、前日比1143円28銭安の1万4483円98銭だった。
この日から、株価は激しい乱高下に見舞われている。第一生命経済研究所経済調査部の藤代宏一・副主任エコノミストは「5月半ばの急騰は異常でした」と振り返る。
いまの局面を「調整」とみる専門家は少なくないが、株価はいつ落ち着くのだろう――。ターニングポイントは案外早く訪れそうで、藤代氏は「今晩(日本時間6月7日)にもわかる米雇用統計にサプライズがなければ、来週には落ち着く方向になるでしょう」という。
株価9000円、為替1ドル80円の見方も
株価の乱高下の原因は「過熱感にある」と、前出の第一生命経済研究所の藤代宏一氏はいう。投資家は一たん、利益確定売りのタイミングを探っていた。そこに米国の金融緩和が縮小されるとの観測が広がった。
「米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が5月22日に、5年間続いた量的緩和の早期縮小について、『今後のデータしだい』とコメントして以降、投資家の目がFRBの政策ばかりに向いてしまった。そのデータの一つが今晩の雇用統計です。投資家の多くは短期筋ですが、神経質になっていて、それが日本株にも影響を及ぼしています」と説明する。
そんな藤代氏の「株価と為替」の予測は、年内に株価が1万6500円~1万2000円。為替は1ドル105~95円とみている。
ちなみに、週刊現代(6月15日号)では、市場のプロ40人が「株価と為替」を予測。「強気」に予測するのは、嘉悦大学ビジネス創造学部の高橋洋一教授で、年内の株価の高値は2万1000円(安値は1万3000円)、為替は120~100円。一方、田代秀敏ビジネス・ブレークスルー大学教授は高値で1万4000円、安値は9000円と予測。為替は100円から、高値は80円まで上昇するとみている。