プライバシーの面から強い抵抗感も
例えば医療分野で、電子化したカルテをマイナンバーで管理すれば、どこの病院でも過去の治療歴を確認でき、検査や投薬の重複を避けられるなどのメリットが指摘される。東日本大震災のような場合、被災した病院でカルテが消失し、治療に遅れが出るといったことも、マイナンバーで過去の治療歴を把握できれば、避難先の別の病院でも適切に治療を受けられる。銀行口座などをマイナンバーで管理して名寄せできれば、利子所得などを正確に把握でき、脱税防止にもつながる。
だが、マイナンバーはかつて「国民総背番号制度」と呼ばれたように、個人情報を行政が細かく把握するため、プライバシーの面から根強い抵抗感がある。さらに、情報漏洩への懸念から、市民団体などが反対している。医療などへの利用が先送りされたのも、そうした声に押されたからだ。
現行の住民基本台帳ネットワークでも、住民票コードがネットに大量流出したり、他人になりすまして住基カードを取得し銀行口座を開設したりする不正行為が起きており、情報の範囲・量が格段の増えるマイナンバーでの被害は計り知れない。写真付きカードで本人確認を徹底するといっても、あくまでも窓口の話。給付金の振込先の変更手続きなどをネットで可能にすることも検討中といい、不正アクセスによる「なりすまし」はもちろん、例えばパソコンを高齢者の家に持ち込んで、言葉巧みに番号カードを借りてログインし、給付金の口座を付け替えるといった犯罪も想定されることが、国会審議の中でも指摘された。