円相場が急騰した。ニューヨーク外国為替市場では2013年6月3日に一時1ドル98円を付け、この流れを受けて4日の東京市場でも99円台で推移している。
菅義偉官房長官は4日の閣議後の記者会見で、「あれだけ(政権発足当時の83円台)の円高から急激な円安になったのだから、調整するのは当然」と述べたが、上がったり下がったり、荒い値動きはいつになったら落ち着くのだろうか――。
円103円から、1か月ぶりの98円台
2013年5月の米ドル円相場は97.02~103.73円のレンジで推移。その幅は6円71銭と小さくない。月間の終値ベースでは、前月比約3.0%の上昇(ドル高・円安)となった。
「円安ドル高」に動く要因には、米国景気の回復や長期金利の上昇、米国の超低金利政策の長期化観測の後退、日本の財政赤字や経常収支の悪化観測に日銀のさらなる金融緩和などがある。
アベノミクスによる円安は、日銀による「異次元の金融緩和」が大きな要因ではあるが、加えて、最近は米国景気の回復基調が鮮明になってきたことがある。
ところが、2013年6月3日のニューヨーク外国為替市場は一時、1ドル98円86銭近辺まで買われる、円高ドル安に動いた。1ドル98円台を付けるのは5月9日以来、約1か月ぶりで、年初来安値から5円近く円高に値を戻した。
4日の東京市場でも円相場は売り優勢で、10時時点で1ドル99円37~40銭近辺と、前日17時時点に比べて85銭の円高・ドル安で推移。しかし、その後は円が買われ、17時には前日比81銭円高の1ドル100円32円近辺に落ち着いてきた。
円が急落したのは、5月の米製造業景況感指数が市場予想に反して低下したのがきっかけ。米国景気の先行き不透明感が強まると、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和策の縮小に対する観測が後退。米債券市場では国債が買われて長期金利の利回りが低下して、日米の金利差の縮小を見込んだ「円買い・ドル売り」が進むという筋書きだ。
とはいえ、外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「円安の流れは変わらない」という。「株価が乱高下を繰り返しながら落ち着いてきているように、ドル円相場もそうそう荒い値動きは続かないとみています。たとえば日本の貿易赤字が定着してきているように、実需では基本的に円安基調にあります」と説明する。