「金額にこだわっているわけではない」
避難している人たちの現状ははっきりしない部分があるが、なぜ月に35万円も必要だと考えたのか。
支援弁護団の事務局長をしている浜野泰嘉弁護士は、取材に対し、こう説明した。
「カバー金額の低い自賠責ではなく任意保険を考え、交通事故で入院した場合に出た慰謝料の判例を参考にしました。そのうち、普通のケガで出る53万円ではなく、むち打ちの軽傷で出る35万円の基準を選んでいます。通院ではなく入院の場合にしたのは、避難されている方々が身体的自由や生活基盤から離れていると考えたからです。仮設や借り上げの住宅で生活しているのは、入院と同じことになると思います」
4人家族なら月140万円にもなることについては、こう話す。
「避難されている方は、家族がバラバラになったり、コミュニティが破壊されたりしており、元の生活に戻れる保証もありません。1人1人が受けた苦痛を考えれば、その金額は不当ではないと思います」
もっとも、金額にこだわっているわけではないともいう。
「いくらが妥当か議論するつもりはなく、被害の大きさについて知ってほしいということです。当面の救済が月10万円ということで、2年経って見直しが必要になっており、そのきっかけになればいいと考えて申し立てました」
慰謝料は5年が想定されているが、弁護団では、浪江町の除染が完了し、事故前の線量に戻るまでを主張している。これでは相当長期間になることについて、浜野弁護士は、「いつまで支払えと言っているのではなく、避難されている方が町に戻れるようになることが大切だということです」と話す。
避難民が働かずにパチンコをしているという批判については、「精神的な苦痛に対し、どうお金を使うかは個人の自由だと思います。それについて批判が起きるのは、避難されている方への理解がまだまだ進んでいないからではないでしょうか」と言っている。