ソニーが、米投資ファンド「サード・ポイント」から一部事業の分社化を提案された。株主からの重要提案だとしてソニーは取締役会で議論する方針。米国では景気回復に伴い、こうした物言う株主の動きが活発化し、経営改革案を提示して企業と対立するケースが出始めている。
アベノミクスで日本企業の業績も好転する中、外国人投資家の日本市場への関心も高まっており、まずは日本を代表する国際企業であるソニーに矛先が向いた形だ。今後はほかの日本企業にも波及する可能性があり、「物言う株主」の動向が注目される。
米ヤフーのCEOを交代させた実績
ソニーの発行済み株式の6%超を保有するとみられるサード・ポイントのダニエル・ローブ最高経営責任者(CEO)は2013年5月14日、ソニーの平井一夫社長兼CEOと面談。映画や音楽など娯楽部門を分社化し、株式の15~20%を上場してソニー再建の資金をひねり出すべきだとする提案を突きつけた。
平井社長兼CEOは5月22日に都内で開いた経営方針説明会で「株主からの重要提案。取締役会で議論を始めた」と述べ、ひとまず大株主への配慮をみせた。
ローブ氏は昨年、米ヤフーに経営再建を求め、当時のCEOを退任させ、米グーグル幹部だったマリッサ・メイヤー氏(女性)をCEOに就けた実績を持つ。米国の著名投資家の1人だが、ソニーに対しては現経営陣を支持する立場で、今のところは友好的な姿勢を示している。ただ、ソニー側の対応次第ではヤフーを相手にした時のように態度を硬化させる可能性もあり、「ソニーは下手な対応はできない」(業界関係者)というわけだ。
アップルにも「株主還元」を要求
米国で企業に提案活動を行ってきた物言う株主は、2008年のリーマン・ショック後は資金難から鳴りを潜めていた。しかし、米株式市場が活性化するとともに再び動き始めた。標的になっているのが、企業がため込んできた資金だ。
米国の物言う株主として名をはせるデビッド・アインホーン氏は2月、米アップルに対して巨額の手持ち資金を株主還元するよう要求して対立姿勢を示し、アップルが4月に配当増などの株主還元策を発表するきっかけを作った。ほかにも著名投資家と企業の対立は表面化。物言う株主の発言権は確実に高まっており、米国企業も警戒を強めている。
アベノミクスで株高が進んだ日本。「米国同様に日本企業も潤沢な手持ち資金を抱えており、物言う株主の動きが日本に波及する可能性は高い」(アナリスト)だけに、ソニーの動向を注視する企業は少なくない。いつ標的になるか分からず、一部に、水面下で対策を講じる動きも出始めているという。