縫製工場が入るビルの倒壊で1100人を超える犠牲者が出たバングラデシュ。衣料品の一大生産国に成長した同国で労働環境の劣悪さが浮き彫りとなり、大手衣料品メーカーに対する安全協定を策定する動きが出た。
同国に生産拠点を構える欧米企業が参加を表明するなか、カジュアル衣料大手のファーストリテイリングは態度を保留中だという。
「署名しないと決めたわけではなく、検討段階」
首都ダッカで2013年4月に起きたビル崩落事故は、事前に建物内で亀裂が見つかり危険性が指摘されていたにもかかわらず、縫製工場の経営者が従業員に、作業に戻るよう強制していたとされる。利益優先のあまり安全面を無視した行為が、結果的に多くの人を悲惨な事故に巻き込んだと言えそうだ。
事故後、労働団体が中心となって工場の倒壊や火事から労働者を守る安全基準が策定された。国際労働機関(ILO)も参画している。協定の内容を見ると、発注元となるメーカーは提携先の現地工場の職場環境に関して、建物の安全点検や火災を想定した避難訓練の実施、必要に応じての改善を5年間にわたって継続するよう要求。合わせて年間最大50万ドル(約5000万円)を安全対策のために積み立てることを規定している。
2013年5月28日付のウォールストリートジャーナル(WSJ)電子版(日本語)によると、これまでに協定に署名する意思を明らかにしているのは30社に上るという。スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)や、「ザラ」ブランドを展開するスペインのインディテックス社が名を連ねる。一方、米ウォールマートやシアーズ・ホールディングス、ギャップといった企業は参加していない。さらに不参加組に含まれるのが、「ユニクロ」のファーストリテイリングだ。
WSJには「当面参加せず」「協定に参加しない方針」と書かれているが、J-CASTニュースがファーストリテイリングに電話取材すると、広報担当者は「署名しないと決めたわけではなく、現在(協定の)内容を詳しく見て検討している段階です」と回答した。今後、協定に加わる可能性も残している。この動きとは別に、同社のバングラデシュの提携先工場で5月27日から、独自に安全性の個別調査を開始していると説明した。