韓国の原発は安全です――そう国を挙げてアピールしてきた韓国が、まさに崖っぷちに追い詰められている。試験機関の不正により、不良部品が複数の原発に納入されていたことが明らかになったのだ。
しかも不正が行われたのは緊急時の命綱となる基幹部品で、ひとつ間違えば悲惨な事故につながりかねない。韓国内では最近原発をめぐる不正が相次ぎ露見しており、「原発大国」の野望も事実上頓挫状態だ。
日本出し抜き「原発大国」狙っていたが…
「安全に運営されている韓国の原発を高く評価している」――孫正義・ソフトバンク社長のものとされるこの発言は、韓国メディアで広く報じられた。この発言があった2011年6月当時、韓国は福島第一原発事故を引き起こした日本に代わり、「韓国産」原発を世界に広めようと意欲満々だった。また、海外の技術に頼らない「純国産」原発の製造を目指し、国を挙げて研究に取り組んでいることもアピールしていた。
ところが2013年5月28日明るみに出たスキャンダルは、あまりにお寒い現状をさらしてしまった。
問題となっているのは、事故が発生したときに冷却装置を作動させる信号を送るための「制御ケーブル」だ。重要部品とあって、当然専門の試験機関による厳重な検査を合格して納入されていた。
ところが、匿名の通報を受けて韓国の原子力安全委員会などが調査したところ、その肝心の試験機関が不正を働き、性能評価を偽造していたことが判明した。件の装置は韓国内の原発6基で使用されており、一部にいたっては使い物にならない「不良品」だったという。韓国では慌てて原発2基を運転停止したが、これにより夏には「未曾有の電力危機」が起こるとパニックに陥っている。
韓国での「原発不正」は、これが初めてではない。2012年には複数の原発で賄賂と引き換えに、仏アレバ社の製品を元に「偽造」された部品が使われていたことや、中古部品が新品と偽って納入されていたことなどが立て続けに発覚した。小規模な事故も続発し、なんとか信頼を回復しなければ――今回の事件は、そんな矢先に起こったわけだ。
「世界一安全と自称していますが、実際には事故は何回も起きている」
そもそも、韓国が描く原発輸出戦略自体、必ずしも成功しているとは言いがたい。2009年にはアラブ首長国連邦(UAE)から受注を取り付け、世界を驚かせたものの、最近はトルコでの受注競争で日本に敗れている。
かつて時事通信ソウル特派員などを務め、『悪韓論』(新潮新書)の著書がある評論家の室谷克実さんは、韓国原発の「安全神話」は上記の事件があった2012年の時点ですでに崩壊していたと言う。
「世界一安全と自称していますが、実際には事故は何回も起きている。売り込みもほとんど相手にされず、資金面でもUAEで手一杯。しかも問題が発覚した28日が、そのUAEで原発2号機の着工式が行われた日なんですから……」
ちなみに韓国ではUAEでの受注を記念して「原子力の日」まで制定している。
また韓国が目標に掲げる「原発の純国産化」に対しても、室谷さんの見方は冷ややかだ。
「原発に使われるような特殊な技術は、表面だけを真似ても完全に再現できるものではない。今回も本来輸入するべきものを背伸びして国内で作ろうとして、結局不良品しかできず、無理やり通したといったところではないか」