大量のゴミ詰めた袋を背負って「命がけ」の回収
エコヒマルでは2011年から、山に残されたゴミの清掃活動をスタートし、これまでに8トンを回収したと報告している。大量のゴミを詰め込んだ袋を背負い、スタッフが高地から下山してくる「命がけ」の作業と言えるだろう。ベースキャンプ手前のトレッキング道沿いで、ゴミ集積所を開設した場所もある。
日本では、アルピニストの野口健さんによる清掃活動が知られている。野口さんが代表を務める特定非営利活動法人「セブンサミッツ持続社会機構」のウェブサイトには、エベレストに初めて上った1997年にゴミ問題を意識したと書かれている。ベースキャンプのいたるところにゴミが散乱し、「各国の登山隊から、『日本は経済は一流だけど、マナーは三流だ』と言われました」と振り返っている。以後、自ら「隊長」として清掃を実施し、その必要性を訴えている。
野口さんが指摘するように、今から16年前には既にエベレストのゴミは深刻なレベルにあったようだ。当時と比べて、山頂を目指す登山者の数は飛躍的に増えている。登山者が増えれば、同行するポーターやシェルパの数も比例する。その結果、エコヒマルの報告にあるように50トンに上るゴミが毎年排出され、民間団体が個々に回収せざるを得ない状況になっている。
近年ではゴミだけでなく、増加する登山者による排せつ物の処理が問題視されているという。エコヒマルでは簡易トイレの設置をネパール政府に求め、事態の改善に動いているそうだ。ゴミや汚物、さらには地球温暖化がエベレストの環境を悪化させる要因として懸念される。
(5月30日12時15分追記)エコヒマル・カトマンズ事務所のフィンジョ・シェルパ氏はJ-CASTニュースの取材に、「エベレストのゴミは1950年代から蓄積されたもの」と説明する。「ネパール政府が、登山者によるゴミ持ち帰りを義務付けるルールをつくるべき」との主張だ。一方で「(政府が)熟練のシェルパを雇用し、ベースキャンプに派遣して当局がゴミ事情を詳しく把握する、地元の環境団体に一定の権限を与えて、登山者がゴミを持って下山するよう働きかけられるようにする、といった方法も解決策として考えられると思います」と話した。