政府の拉致問題対策本部が脱北した朝鮮人民軍の元幹部を名乗る人物に事情聴取し、「1980年代に日本海で漁船の日本人乗組員を拉致した」などと話していたと、産経新聞が1面トップで2013年5月28日に報じた。証言では拉致の手口を生々しく説明しており、拉致が60年代から80年代に頻繁にあったことも明かしている。仮にその内容が本当だった場合、当時「海難事故」で行方不明になったとカウントされていた人が、実は北朝鮮による拉致被害者だったという可能性も出てくる。
拉致問題担当相「信ぴょう性を含めて、今後慎重に検討」
産経新聞によると、事情聴取に応じた元幹部は、80年代に青森県内沖で5人前後が乗った漁船を襲ったという。具体的手口については
「夜、無灯火で日本漁船に近づいて乗り移り、銃を突きつけ船員を制圧。10~30代だけを工作船に連行し、高齢だったり、抵抗した乗組員は船倉や船室に閉じ込め、船ごと沈めて証拠隠滅を図ったという」
と報じている。
この報道について、古屋圭司拉致問題担当相は5月28日の会見で、
「内容が、事柄の性質上、具体的にコメントすることは控えさせていただきたい。ただ、その信ぴょう性を含めて、今後慎重に検討していく必要がある、そういう認識でいる。それから『どうやって聴取したのか』ということだが、これもコメントを差し控えるのが適当だと思う」
と述べ、証言の信ぴょう性には疑問を呈したものの、聴取を行ったこと自体は否定しなかった。
軍による海上の日本人拉致の具体的証言が得られるのは初めてだとみられるが、拉致だと断定されていないケースでは、過去に手口が明るみに出たことがある。1960年代に起きた「寺越事件」だ。