新OS「Tizen」はサムスンが旗振り役
一方のサムスンにも、グーグル離れを予感させる動きがなくはない。気になるのが、新OS「タイゼン(Tizen)」の開発だ。サムスンや米インテルが旗振り役となり、中国ファーウェイ(華為技術)や富士通といったメーカーのほか、NTTドコモや韓国KTなど通信キャリアも参加する。
今日、スマホのOS市場はiPhoneの「iOS」とアンドロイドが他を圧倒する。新規参入するTizenが対抗軸になり得るかは注目だが、それとは別にアンドロイド陣営トップのサムスン自ら開発を主導しているのが興味深い。米ブルームバーグ3月15日付記事によると、サムスン電子副社長の李英熙氏はTizen搭載のスマホを今年8、9月に発表し、しかも高位機種になると明かしたという。ギャラクシーだけにとどまらず、グーグルの「縛り」を受けないTizenでもスマホ市場で勢力を拡大しようと狙う。
5月28日付の日本経済新聞朝刊では、サムスンが「アップルがつくったOS、スマホ、コンテンツ配信が結合した生態系を越えるモデルをつくる」のが目標だと報じられた。折しもアップルの「iPhone5」は、これまでのモデルと比べて売れ行きが伸び悩んでいるとの指摘がある。「アンドロイド依存度」を下げてTizenに移行するタイミングを見計らい、アップル超えを果たす好機と見るや一気にアクセルを踏み込む可能性はある。
とは言え現状ではアップルが両社共通の「強敵」であり、サムスン自身がアップルと長期にわたって係争中。今すぐにアンドロイド陣営から完全離脱するのは現実的とは言えない。日経の記事ではサムスン幹部のひとりから「今後はもう少しグーグルと緊密に協力していく」との本音が漏れた、と書かれている。当面は2社とも「蜜月ぶり」のアピールを続けるだろうが、市場の変化によってはいつか「別れの時」が来るかもしれない。