全国のセブン-イレブンなどに現金自動預け払い機(ATM)を1万8000台超、設置してお金の出し入れなどの金融サービスを展開するセブン銀行は、日本国内から海外への送金サービスを強化する方針だ。
国内のコンビニ自体はスーパーなどから顧客を奪うなどの形でなお成長途上にあるものの、セブン銀行としては従来型の国内ATM事業だけでは一段の伸びに乏しいと判断しているようだ。
フィリピンへの送金が8割を占める
「客が客を呼ぶ形で増えている」
5月10日、東京都内で開いた2013年3月期連結決算の発表会見の席上、セブン銀行の二子石(ふたごいし)謙輔社長は、海外送金サービスについてこう強調した。
「客が客を呼ぶ」状態にあるのは、特にフィリピンから出稼ぎに来ている労働者。女性を中心とする、比較的短期滞在者だ。
従来、フィリピンへの送金は銀行開店時間内に窓口に足を運んで、それなりの手数料を支払うのが一般的だった。しかし、セブン銀行なら利便性が高い。口座を開設するなど最初の手続きは必要だが、それが済めば街中のあちこちに存在する24時間オープンのセブン-イレブン店内に設置された機械の操作だけで、深夜でもOK。もちろん手数料はかかるが、「5万円以下」のような小口なら手数料が割安になるなどの特典が受けている。
こうした使い勝手が口コミで広がっており、2013年3月期のセブン銀行の総海外送金件数約18万9000件のうち、フィリピンへの送金は8割を占める「上客」だ。
とはいえ、2011年7月のサービス開始からまだ2年足らずということもあり、海外送金サービス事業単独では採算ラインを割っている。倍々ゲームで件数を増やして3~4年以内に送金件数100万件超を達成し、黒字化するのが目下の目標だ。
ATM9か国言語に対応できるように改善
このため、フィリピン偏重からの脱却を図る。まず今年2月、問い合わせ・申し込みを一元化して電話で受け付ける「海外送金カスタマーセンター」を設置し、日本語、英語、中国語、タガログ語(フィリピンの公用語)、ポルトガル語、スペイン語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語の全9言語での対応を始めた。
これに加え、今年度下半期(10月~2014年3月)には、セブン銀行の国内すべてのATMを、この9言語で取引できるように改善する。日系南米人や東南アジアからの出稼ぎの人たちの需要を取り込みたい考えだ。韓国人は英語ができる人が多いため、韓国語の対応はしないという。
セブン銀行は預金を集め、個人向けローンなども展開しているが、利用者がATMを使うたびに提携銀行などから入る手数料が売上高の9割超というビジネスモデル。日本中の便利な場所で24時間使えるインフラの運営コストはセブン銀行側が負担するので、提携銀行にとっても悪くない話ということもあって、セブン銀行は増収増益を続けている。
ただ、ATM手数料頼みでは一段の成長は望み薄。電子マネーの普及などで現金利用が減れば、ATM利用も減りかねない。そこで目をつけた海外送金が、ATMの海外展開などともに新たな収益の柱になるか、セブンの成長神話の行方が注目される。