教師による体罰が問題化するなか、東京都教育委員会は2013年5月23日、体罰が発覚した学校名や、体罰の内容を公表した。
ここまで細かく発表されるのは異例で、「体罰根絶」に向けた抑止効果が期待されている。体罰が発覚した学校の分布を見ていくと、発生した区域は、かなり偏っているようだ。何が背景にあるのだろうか。
進学校の日比谷高校でも発覚
調査は13年1月21日から3月15日にかけて都内の公立学校を対象に行われ、12年度中に小学校30校、中学校82校、高校33校で体罰が行われていたことが明らかになった。その中で、加害者が卒業生や上級生だったケースを除いた小学校31校、中学校71校、高校28校については、学校名と、体罰が行われた回数も公表。進学校として知られる日比谷高校でも弓道部員5人の顔を叩くなどの行為が行われたことが明らかになり、体罰の根深さが浮き彫りになった。
最も体罰が発覚した数が多かった中学校について地区別に見ていくと、千代田区や中央区など5区が0件。大半の区が5件以内に収まっている。ところが、足立区は8件、江戸川区は17件と突出している。
「傷害を負わせた事案」では3分の1占める
特に悪質な「傷害を負わせた事案」の具体的な内容も公表されている。中学校については17件公表されているが、そのうち6件が江戸川区。その内容も、
「生徒が練習中に漫画を読んでいたことについて指導した際、同生徒を注意しなかった別の生徒の左頬を3回たたき、更に漫画を読んでいた生徒が何度も謝罪していたにもかかわらず左頬を繰り返し30回程度たたき、左鼓膜外傷の傷害を負わせるなどの体罰を行った」(南葛西第二中学校)
「顧問を務めるサッカー部の試合の合間に遊んでいた生徒を指導した際、平手でたたく、足を蹴る等の体罰を行った。また、同部の生徒16名に対して、その他指導した際、頭を手のひらで10回、頬を手のひらで2回たたくとともに、拳でみぞおちを3回小突き1名に腹部打撲の傷害を負わせた」(鹿骨中学校)
といったハードなものが散見される。
ファミリー層への調査では意外に高評価
江戸川区は都心へのアクセスが良く、地価も相対的に安いため、ファミリー層に人気だとされる。都教委の発表とは逆に、江戸川区の教育に関する評価は、必ずしも低くないようだ。例えば不動産・住宅情報サイト「HOME'S」の運営会社が12年10月、都内のファミリー層を対象に、今住んで済んでいる地域の住み心地について聞いた調査の結果には、
「江戸川区は『市(区)政の子育て・教育サポート制度』、『公園・図書館・児童館などの施設の充実』、『幼稚園や学校の充実』といった子育ての公的サポートや公的設備に関する項目で(ベスト20のうち)上位3位に入る高評価を得ています」
とある。
今回の体罰に関する調査を行った東京都教育庁人事部の担当者によると、体罰の地域分布について特に分析などはしていないといい、江戸川区の突出ぶりには首をかしげている様子だった。