薄型テレビの世界シェアで半分近くのシェアをもつサムスン電子 とLG電子が次世代モデルとして力を入れている「有機ELテレビ」が、なかなか軌道に乗らない。
両社は2012年中に大型の有機ELテレビを発売する予定だったが、今のところLG電子が13年1月に韓国内で1100万ウォン(約100万円)の55型を投入しただけ。製造コストが思うように下がらないためとみられる。
有機ELテレビ市場、2014年に170万台を出荷
ディスプレイ市場を調査するNPDディスプレイサーチは、有機ELテレビ市場は2014年の出荷台数で約170万台になる、とみている。
この市場で先行するのはサムスン電子 とLG電子の韓国勢。ディスプレイサーチでは、これに日本や台湾、中国のメーカーがパネル製造に乗り出し、14年には生産を開始。16年には900万台で、薄型テレビ市場の3%を占めると予測する。
有機ELテレビの最大のよさは「薄さ」と「省電力」。有機素材が自ら発光するので、液晶テレビと違ってパネルの背面に光源がいらない。その分薄く、かつ消費電力を抑えられる。もちろん、映像も色鮮やかという。
そんな有機ELテレビの製造・販売に韓国勢が苦戦している理由は、まず価格が高いこと。製造コストが下がらず、採算を確保できないことにある。
ディスプレイサーチの鳥居寿一アナリストは、「韓国勢は、いわば社命として有機ELテレビの開発に取り組んできましたが、有機ELは大型化や量産がむずかしい。そのため、時間がかかってしまっています」と話している。
対抗する日本勢が推しているのが、「4Kテレビ」だ。表示パネルの画素数がフルハイビジョンの4倍ある高画質化、高精細化を追求していて、有機ELテレビと比べると製造コストが安く、大型化しやすいのが特徴だ。
日本勢にとって、「昨年9月に欧州で行われたIFA2012(エレクトロニクス機器展示会)以降、世界の関心が4Kテレビに移った」(鳥居氏)ことは追い風。開発コストがかかる有機ELテレビは、経営状況が悪いこともあって「後回し」にせざるを得なかった事情もある。
ディスプレイサーチによると、2012年に6万3000台だった4Kテレビの世界出荷台数は、13年は260万台に急拡大すると予測。16年には700万台を上回るという。
また、世界の液晶テレビ(50型以上)の出荷台数に占める4Kテレビの割合は、12年の0.1%から13年には5%、16年には31%にまで拡大すると試算する。
「4Kテレビ」13年後半には韓国勢も参戦
ソニーは2013年6月、65インチと55インチの4Kテレビを売り出す。販売価格(想定)は75万円と50万円。12年168万円で発売した84インチより価格とサイズを抑えることで、一般家庭への普及を目指す。
これまでの薄型テレビは画面の縦の長さの3倍以上離れないと、画面の粒子が目立って自然な映像に見えなかったが、高精細な4Kテレビならその半分の距離まで近づいても違和感がない。「6畳間でも十分楽しめる」のが売りだ。
シャープも2013年6月に、60型と70型の4Kテレビ「AQUOS UD1」シリーズを発売する。同社は13年の国内4Kテレビの出荷を約5万台と予測。販売価格(想定)を約65万~85万円に抑えることで、「2~3割のシェアを獲得したい」としている。
4Kテレビは日本勢のほか、中国の創維数碼(スカイワース・デジタル・ホールディングス)も手がけている。立ち遅れた韓国勢も、2013年後半には発売に乗り出してくる。
前出のディスプレイサーチの鳥居寿一氏は「テレビの過去の歴史(ブラウン管→ハイビジョンブラウン管→薄型(HD→フルHD)の流れをみても、大型化と高解像度化(高画質化)は受け入れられるでしょう。コンテンツがそろってくれば、大型化とハイエンドプレミアムの商品として前倒しで需要が起こるとみています」という。