老後の生活費などの資金を、自宅を担保に借り入れる「リバースモーゲージ」を、2013年7月にもメガバンクの一角、みずほ銀行が取り扱うことになった。
高齢化社会の進展で年金資金の不足など、老後の生活に不安をもつ中高年は少なくない。そんな悩みを解消しようと、政府も高齢者向けの金融サービスとしてリバースモーゲージを後押ししており、その動きを踏まえた取り組みという。
東京・武蔵野市は「廃止」の方向
リバースモーゲージとは、持ち家で暮らすものの現金収入が少ないという高齢者世帯が、住まいを手放すことなく老後の生活資金を確保するための手段で、持ち家を所有する契約者がその土地などを担保に銀行からお金を借りて老後の生計を立て、契約者が亡くなった後に土地を売却して資金を返済するか、相続人が肩代わりして返済する仕組み。
厚生労働省によると、65歳以上で単身や夫婦のみで暮らす世帯は、1970年代に96万世帯で全世帯のわずか3%だったが、2010年には1081世帯で全体の20%に達した。20年には30%超に達する見通しだ。
基本的に融資は終身なので、自宅に住みながら、年金生活の資金不安が解消できるメリットは小さくない。
ただ、国内では東京都武蔵野市が1981年に「福祉資金貸付事業」として導入して以来、都市部の自治体や信託銀行などが相次ぎ取り扱いをはじめたが、なかなか普及しないのが実情だ。
武蔵野市の2011年度の累計貸付は約17億円。貸付残高は約4億円にとどまる。市では現在、制度を廃止する方向で検討。「利用が少ないこともあり、今後は各都道府県の社会福祉協議会の制度や、民間金融機関の商品を利用してもらおうと考えています」(高齢者支援課)という。
銀行界では現在、三井住友信託銀行や東京スター銀行などが取り扱う。東京スター銀行の場合はマンションも担保にできる商品で、発売開始(05年9月)からの取扱件数は、累計で2500件を実行している。
金利の上昇局面には支払い利息が増えることも
そうした中で、みずほ銀行は2013年5月20日、メガバンクとして初めてリバースモーゲージを取り扱う、と発表した。「商品性などの詳細は現在詰めているところ」という。
融資は、住宅ローンを完済している55歳以上の人を対象に、土地の評価額の50%程度を上限とする方向。グループのみずほ信託銀行と連携し、遺言信託などの資産継承へのニーズに対応するほか、老人福祉事業者などと提携して65歳からは老人ホームの入居保証金にも充てられるようにする。
とはいえ、リバースモーゲージにも「弱点」がある。金利の上昇局面には支払い利息が増えることがあるほか、地価の下落で担保の評価が著しく下がると、計画どおりに借り入れができなくなる心配もある。商品によっては融資が止まり、利息の支払いだけが続いたり、そもそも相続人の承諾が得られないと利用できなかったりすることもある。