「貴重な遺産として保護することが急務」
「『特撮』を我が国の文化として認識し、貴重な遺産として保護することが急務である」(尾上氏)
その理由として挙げられるのは、第一に、高齢化と、ミニチュアなどを新作する機会がなくなったことによる、技術継承が進まない現状。そして、アナログ時代の特撮用に作られた着ぐるみ、ミニチュアや小道具などの「遺産」が、「第一級の現代美術品と言えるものも少なくない」(尾上氏)にも関わらず、物品資料として組織的に保護されていないことだ。2005年ごろからはじまった各映画会社のスタジオ再編などにともなう倉庫整理で、すでに廃棄処分の憂き目にあったものが多くあり、今後も経済的理由などで処分される可能性は非常に高い。それ以外の貴重品は、もっぱら個人収集家のコレクションとして保管されている。尾上氏は「早急にこれらの物品資料の保護対策をとるべきであろう」と指摘する。
庵野監督もこう協力を呼びかけている。
「その技術と製作現場で続ける為に抗い、その技術と文化を後世に残すために保存したいと切に思います。ぼくがもらった夢を次世代にも伝え、残したいと切に考えます。それは、個人では、きわめて困難な目標であり事業です。(・・・)特にミニチュア等の保存に関しては可能な限り速やかに助けて下さい。よろしくお願いします」
クールジャパンは、もともとは日本独自の文化が海外で評価を受けている現象、またはその日本文化のことで、主にマンガやアニメ、渋谷・原宿のファッションなど、ポップカルチャーを指していた。最近では食文化なども含めて、政府が「クール・ジャパン」輸出戦略に力を入れており、2013年度は計500億円の予算を計上。海外展開支援、輸出の拡大、人材育成や知的財産保護などの事業を、官民一体となって展開する。ただ、特撮がこの範疇に入ることができるのかは不明だ。