武装集団の激しい暴力で漁業続けられなくなった
海外報道も多い。AP通信は環球時報と同じく船主に取材しているが、5月21日付の記事の中で、北朝鮮軍の軍服を着た武装集団に「船長が殴られて腕にけがを負った」と語っている。暴行のいきさつには触れていない。解放の時点で回復しており、ほかの船員が暴力を受けた事実はなかったという。船の中を歩き回るのは許されたが、夜間は船室から出るのを禁じられた。「船長によると、北朝鮮側の男たちは軍人のようで、銃火器を携帯して漁船を拿捕する際にそれを使用した」と語ったという。
北朝鮮は2012年5月にも、中国漁船3隻を拿捕して計29人の船員が拘留されている。先の環球時報の記事では当時の船員の証言を掲載。船長が暴行されて片方の足を骨折したほか、激しい暴力を受けた船員がおり、計8人が解放後に漁業を継続できなくなった。一方で総額120万元(約1992万円)を超える船の設備や燃料、日用品が奪われたそうだ。
中朝は朝鮮戦争以来「血で固めた盟友」とされ、過去に北朝鮮がミサイル発射や核実験を実行しても、中国が国際社会に「冷静な対応」を呼び掛けて強力な制裁に一定の歯止めをかけてきた。だが2013年3月には、国連安保理の制裁決議に中国が賛成に回ったほか、一部の銀行間取引を停止するなど関係性に変化が見られる。上海・同済大学の朝鮮半島研究センター所長は環球時報にコメントし、「伝統的なイデオロギーの結びつきから、一般的な2国間関係に変わってきた」ため、この種の問題が浮上するようになってきたと指摘。漁業権確定のため中国当局は話し合いでの解決を望んでいるが、北朝鮮が今回のように「対応を誤る」ことになれば、中国も相応の態度をとることになるだろう、としている。
別の専門家は、中国政府が北朝鮮との摩擦に関してもっと情報公開を徹底すべきだと主張。中国側の権利を脅かす相手に対しては制裁をちゅうちょしてはならないと、強硬な意見を示している。