世界遺産への登録が決まって観光客の増加が予想される富士山が、そう遠くない将来に噴火する恐れがある、と指摘されている。
富士山の噴火で流れ出す溶岩が100キロメートル以上離れた東京にまで届くことはないだろうが、火山灰は別だ。火山灰といえども、風に乗って東京に届くことで首都機能がマヒして大混乱に陥る懸念がある。
火山灰は「ガラス質の成分を含む」
富士山は1707年の「宝永大噴火」以降、大規模噴火は起きていない。大規模な火山災害への備えを検討してきた内閣府の有識者検討会は2013年5月16日、富士山などを念頭に、「日本列島は今世紀中に、大規模な噴火が発生してもおかしくない」と指摘。最近の約100年で大きな噴火は起きていないが、東日本大震災の影響でその恐れが高まっているという。
「宝永大噴火」は当時の江戸市中にも、約7億立方メートル、東京ドーム560杯分の大量の火山灰を降らせた。しかも数週間にわたって降り注いだ、とされる。
内閣府は2004年に、富士山の火山灰がどのくらい飛び、どのくらい降り積もるのかを想定した「ハザードマップ」を作成。そこでは静岡と山梨の県境周辺で30センチ、東京から千葉一帯は2~10センチ程度の火山灰が降る可能性があるとした。
首都圏は火山灰に覆われてしまうことになる。
もし宝永大噴火のように、東京に大量の火山灰が降ったとしたら、どんなことが起こるのだろうか――。
防災科学技術研究所によると、「建物などに積もった火山灰は、建物がつぶれるほどの加重を加える可能性があります。とくに火山灰が湿っている場合には、この傾向が顕著です」という。火山灰は水とすぐに混ざって泥状になるので滑りやすく、交通が困難になったり、火山泥流を引き起こす要因になったりもする。
宝永大噴火では上空20キロメートル以上まで噴煙があがったといわれていて、そうなると周辺は航空機が飛べなくなる。記憶に新しいのは2010年4月、アイスランドにあるエイヤフィヤトラヨークトル山の噴火では、欧州約30か国の空港が一時閉鎖し、1週間に10万便の航空機が運休した。
火山灰は細かく、融点の低いガラス質の成分を含む。そのため、操縦席の窓ガラスが傷ついて前方の視野が奪われる。また、火山灰がエンジンの燃焼室に吸い込まれると溶けてタービンの羽根などに付着して固まったり、エンジンのタービンを冷やす冷却孔が塞がれたりして、エンジンが故障してしまうのだ。