武装した日本兵が待ち構える基地に、素手で乗り込む武道家たち。銃弾の雨をかわしながら日本兵にパンチを食らわせると、その体は血しぶき上げて真っ二つに――
中国で、そんな荒唐無稽な「抗日ドラマ」が氾濫している。特に最近多いのは超人的な「カンフーの達人」や「美女拳士」たちが日本兵をバッタバッタとなぎ倒す、史実無視、エロあり、グロありの活劇モノだ。あまりの状況に、とうとう中国政府まで規制に乗り出した。気になるその内容は――
銃持つ日本兵をカンフーでぶちのめす
日中戦争を舞台にした「抗日ドラマ」は、以前から中国では広く受け入れられていた。その性質上、日本人は常に残忍な悪役として描かれ、最後には中国側が勝利を収める――というのがお約束となっている。
ところがここ数年、中国国内の反日機運の高まりもあってこうした抗日ドラマの人気が上昇、制作本数も一気に増加した。そうしたブームに便乗して急増したのが、上記のような娯楽性を重視した荒唐無稽な作品、通称「抗日神劇」だ。
「抗日奇侠」(2010年)は、こうした「神劇」の代表作とされる。個性豊かな中国人武道家たちがチームを組み、日本軍を蹴散らしていくという内容だ。冒頭の「真っ二つ」シーンを始め、
「拳で日本兵の腹をぶち抜き、内蔵を引き抜く」
「美女拳士が軽く触れただけで日本兵がバタバタ倒れる」
「走る車に飛び乗り、窓ガラス越しに手を突っ込んで日本兵の頭を握りつぶす」
など、一昔前のB級カンフー映画や「必殺」シリーズを思わせるような場面が目白押しとなっている。日本側にも一応、剣術使いの美女将校のような強敵はいるが、大半の日本兵は武道家たちの技の前に手も足も出ない。