景気回復に兆しがみられるようになったとはいえ、依然として厳しい大学生の就職活動。そうした中で大学が保護者向けに就職説明会を開いたり、カウンセリングを設けたりする「親の就活」がエスカレートしている。
入学式当日に保護者向けに就職説明会やガイダンスを開いたり、保護者用の「就活パンフレット」を配布したりと、至れり尽くせりのようなのだ。
「親の暴走を止めるためには、仕方ない」
「新入生の保護者の皆様、ご入学おめでとうございます」――。そう言って話しはじめたのは、大学のキャリアセンター担当者。入学式に親が出席するというだけでも驚きなのに、その当日に大学が保護者向けに、就職活動をいかに乗り切っていくか説明するというのだ。
法政大学や青山学院大学、東京農業大学……と、いまや「親の就活」に取り組む大学はめずらしくなくなった。たしかに大学に入学してしまえば、親の次なる関心は子どもの「就職」に移っているのだから、自然な流れなのかもしれない。
2012年度の入学式から「保護者向け就職説明会」を実施している法政大学は、「保護者からの強い要望があります」という。2013年度も、4月3日の入学式当日にも開催。そこでは、キャリアセンター長の宮城まり子氏が参加した約100人の親を前に「子どもにお弁当をつくるのはやめましょう」と、子どもの自立を促した。
「いくらなんでも入学式当日は行き過ぎでは」「あまりに過保護」――。そんな声も聞こえてきそうだが、大学が早くから「親の就活」に取り組む理由について、「大学の思い出は就活です(苦笑):大学生活50のお約束」(ちくま新書)などの著者で大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は、「親の暴走を止めるためには、仕方がありません」と話す。
学生が自立できない傾向にある半面、「親が子離れできていない」と指摘する。「子どもを心配するあまり、つい自分の価値観や希望する企業を押しつけたり、イメージや先入観で企業を評価したり、さらには採用について企業に直接電話したりと、干渉しすぎることでかえって子どもにプレッシャーをかけてしまうケースは少なくありません。場合によっては、就活そのものをやめてしまうこともあります」。
大学としてはそういった事態に陥る前に、事前に手を打っておこうというわけ。就活へのかかわり方を、親にきちんと知っておいてもらうのは、早ければ早いほどいいと考えているようだ。
依頼心強い学生、企業説明会にも親が代理出席
一方、大学にしてみれば就職率の高さは、「いい大学」の新たな基準になっていて、「就活のサポート力」(キャリア支援)を競っている。親の協力も、就職率のアップには必要なわけだ。
「保護者向け就職説明会」などでは、どの大学も「身内だからできることをやってほしい」と話していて、たとえば挨拶や身だしなみのチェック、自身のキャリアについても仕事への理解を深めるためであれば伝えるべき、などとしている。
もちろん、リクルートスーツなどの必需品に、交通費なども場合によっては工面してあげる必要がある。
半面、エントリーシートを書いたり、企業説明会に代わりに出席したりすることは子どもがやる気をなくすばかりか、企業だって嫌がる。こうしたことが高じて、子どもの依頼心が過度に強まってしまうこともあるという。