パナソニック、「三洋電機」解体 家電はアベノミクスから置き去りに

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   トヨタ自動車などと並んで「メイド・イン・ジャパン」の象徴だった家電大手のパナソニックとシャープが苦しんでいる。

   円安・株高のアベノミクス効果による急速な業績回復に沸く自動車メーカーとはまったく別世界にいる。まるで時流に置き去りにされてしまったかのようだ。

買収が「裏目」、2年連続で7000億円超の最終赤字

パナソニックは2年連続で7000億円超の赤字を計上した(写真は、パナソニックの
ホームページ)
パナソニックは2年連続で7000億円超の赤字を計上した(写真は、パナソニックの ホームページ)

   パナソニックはとうとう、子会社である三洋電機の「解体」にまで追い込まれてしまった。2013年5月18日付の日本経済新聞が「三洋電機、解体へ」の見出しで報じている。

   2013年度中に本社の人員約1000人を配置転換や早期退職などで100人規模に減らす。法務や知的財産の管理などを維持するうえで必要最低限の人員にするが、パナソニックとの一元化も検討する、という。

   電子機器などの開発と販売を手がける子会社の三洋テクノソリューションズ鳥取(鳥取市)は売却。米小売り大手ウォルマート・ストアーズ向けに供給しているテレビ事業も分離を検討。この結果、本社以外で働く約1500人も3年後をめどに10分の1程度に減らす。

   パナソニックは三洋電機を2011年に完全子会社化。買収当時、三洋電機はリチウムイオン電池で世界シェアの4割を占め、太陽電池も発電効率の高い独自製品で先行。パナソニックはこうしたエネルギー関連事業を本体に取り込む一方で、冷蔵庫や洗濯機、デジタルカメラなどの重複事業を中国のハイアールに売却することで成長戦略を描いたが、目算が大きく狂った。

   調査会社のテクノ・システム・リサーチによると、パソコンや携帯電話などに使う小型リチウムイオン電池(最小単位「セル」)のメーカー別出荷シェアは2012年、サムスンSDIが前年比1.9ポイント上昇の25.1%と、初めてトップに立った。前年首位のパナソニックは2.8ポイント低下の20.7%で2位に転落。3位も韓国のLG化学(16.0%)が続き、劣勢は否めない。

   太陽電池も、環境問題や原発事故以来の自然エネルギーへの期待から需要増が見込める半面、中国メーカーの台頭で価格が急落。収益が上がらない事業になってしまった。

   そこに薄型テレビなど、デジタル家電の不振が加わった。

   リーマン・ショックや円高の影響はあったとはいえ、パナソニックにとって買収は、結果的に2年連続で7000億円を超える最終赤字を計上する一因となった。

シャープ、提携先の拡大に活路

   一方、経営再建中のシャープも過去最大となる5453億円(前期は3760億円)の最終赤字を計上する2013年3月期連結決算を、5月14日発表。あわせて、2015年度までの中期経営計画も公表した。

   中期経営計画では、12年度下期(12年10月~13年3月期)に226億円の営業黒字を確保したこともあり、「足元では業績が上向いている」として15年度の連結売上高3兆円、最終利益800億円を目指すという。

   主力の液晶パネル事業は、省エネ性能の高い「IGZO」(イグゾー)などの販売拡大で工場の稼働率を高めて収益を改善。15年度の売上高を1兆円以上に引き上げる。そのために、米アップルや韓国サムスン電子以外にも液晶パネルを供給する戦略的な提携相手を拡大する。

   経営体制では、奥田隆司社長がわずか1年で取締役でない会長に退き、高橋興三副社長が社長に昇格。現在12人の取締役も9人に減らす。

   そもそも、シャープの躓きは当初再建の柱に据えた台湾の鴻海精密工業との資本・業務提携の不調にある。経営陣の刷新も、その責任をとった形。結果的に、この1年間を資金繰りのためだけに棒に振ったのが「痛かった」が、それにより技術革新や新製品の投入へのスピード感を失ったことのほうがより痛手かもしれない。

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