スマートフォン(スマホ)販売で不振が続くNTTドコモが動いた。夏商戦向けに発表した新モデルで、人気の2機種のみ端末価格を大幅に下げて、他メーカーの端末と区別した販売戦略を打ち出したのだ。
米アップルのスマホ「アイフォーン(iPhone)」に対抗するうえで、不人気モデルはある程度見切りをつけて臨まざるを得ない状況なのかもしれない。
通信キャリアがメーカーの面倒みる体質が変わる時
「ドコモの顔とも言える、ツートップ」
加藤薫社長が2013年5月15日の今夏向けモデル発表会でこう紹介したのが、ソニーの「エクスペリア」と韓国サムスン電子の「ギャラクシー」の最新機種だ。この日は同時に富士通やシャープ、NECカシオなど他メーカーも新製品を披露したのだが、2機種だけが「特別待遇」となった。ウェブサイトも「ツートップ」として別格の扱いをされている。
他の機種と明確に区別されているのが、価格だ。10年以上継続してドコモ回線を使っていたり、従来型携帯電話から乗り換えたりする場合に料金を割り引く。プランによってエクスペリアの端末価格は実質5000円に、ギャラクシーも1万5000円ほどにまで下がるという。これ以外の新製品の価格は出ていないが、加藤社長は報道陣に「1~2万円くらいの差がつくと思う」と発言している。
国内外の大手メーカーのスマホをずらりとそろえるドコモだが、顧客からは「何を選んだらいいか分からないとの声が出ていた」と加藤社長。そこでドコモとして「お勧め」の2機種をあえて選んだそうだ。ただ冬商戦はまたゼロから選び直すとして、他社の端末に変わる可能性を示した。
露骨とも言える思い切った手法に見える。モバイル通信に詳しい青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏に聞くと、「確かにドコモの場合、どのスマホを選べばよいか分からない状況でした」と指摘する。国内ではいまだに「iPhone」のブランド力は高い。そこで国際マーケットで競争力のあるギャラクシーとエクスペリアに絞り込み、社を挙げてプッシュするのは方向性として正しいと評価した。一方で「iPhone 5」の人気に陰りが出つつある今、攻勢をかけるタイミングとしても悪くないという。
木暮氏が注目するのが、国内メーカーの選別につながる点だ。「通信キャリアがメーカーの面倒をみる業界体質が変わる時かもしれません。特にドコモは長年『メーカーと共に』との姿勢でした。スマホへの移行がいよいよ進み、従来の『護送船団方式』から脱却してメーカーが自立せざるをえない。言わば、来るべき時が来たのでしょう」。