りそなホールディングスが、注入されたうちで未返済の8716億円の公的資金を、向こう5年で完済する。2013年5月10日発表した。アベノミクス効果による株高によって、公的資金注入時の政府のりそな株の取得価格を時価が上回ったことが大きく後押しした。
りそなの事実上の国有化が決まり、「次はどこか」との金融不安も広がった2003年5月の「りそなショック」からちょうど10年の節目に、純粋な民間企業として自立する見込みが立った。
着実に利益生む体質に変える
「多額の公的資金はりそなグループの再生と成長を支えたが、真に自立した金融機関となるためにも、公的資金完済を最優先課題としてきた」。日銀クラブで記者会見したりそなの東和浩社長はこう強調した。
2003年のりそなショックの頃は、当局も金融不安を抑えることが優先課題。当時を知る金融当局関係者は「こんなに早く完済できるとは当時は思わなかった」と振り返る。 りそなは、細谷英二氏をJR東日本からトップに迎え、注入された公的資金約3.1兆円のうち、2.2兆円をこれまでに順次返済した。
不良債権処理の断行や企業年金カットなどのリストラを進める一方、「メガバンクとは一線を画す巨大な地方銀行」(金融庁幹部経験者)として、サービス重視を打ち出し、着実に利益を生む体質を作り上げてきた。
もはや、政府が株式を100%持つ日本郵政のようにトップ人事を時の政府の思うままに差配されるわけでもない。とはいえ、やはり政府が株を持つということは、「思い切った商売をするうえでも、人材を集めるうえでも何かとやりにくいものがあった」(金融当局幹部)。
細谷氏は昨年11月に急逝したが、「完済は細谷氏からも託された悲願」(りそな幹部)だった。壁の一つとなっていた株価も、完済計画を発表した5月10日の終値で553円となるなど、5月に入って政府の帳簿価格(520円)を上回る水準をキープしていることが決め手となった。