ビール大手5社によると、2013年4月のビール系飲料の総出荷量は前年同月に比べて2.8%増の3724万ケース(1ケース大瓶20本換算)で、2か月ぶりに前年実績を上回った。
ビールの売り上げが好調で、なかでも居酒屋などの業務用が伸びており、「アベノミクス」効果で「外飲み」需要が持ち直しているとの指摘もある。
家庭でも、発泡酒から「週末はビール」に
キリンビール、アサヒビール、サッポロビール、サントリー酒類、オリオンビールの5社が5月14日に発表したビールの出荷量は同3.9%増の1803万ケースと、大きく伸ばした。
ビール酒造組合の「ビール市場動向レポート」によると、ビールの出荷量は飲食店向けの業務用が前年に比べて5.3%増、家庭用も同2.5%増とともに増えた。ビール系飲料市場におけるビールのシェアは48.4%を占めており、ビールの伸びが市場全体を押し上げたといえそうだ。
業界関係者は「業務用の改善は、消費回復の兆しを示している」と指摘。家庭用でも、「これまでビールを我慢して、安価な発泡酒や新ジャンルを飲んでいた人が、週末などにビールを飲みはじめたのではないか」と推察している。
ただ、4月の伸びは前年より出荷日が1日多かったことや、12年4月のビール出荷量が14.7%減と低調だったため、その反動で増加したこともある。13年1~4月の累計出荷量は前年に比べて2.9%減っている。
業務用ビールの出荷量が増えてきても、「外飲み需要が戻ってきている」とまでは言い切れないようだ。
毎月、外食産業の売上高をまとめている日本フードサービス協会によると、2013年3月の外食産業の売上高は、前年同月に比べて1.6%増で4か月ぶりに前年を上回ったものの、「パブレストラン・居酒屋」の売上高は2.3%減と苦戦していて、業態でみると唯一マイナスとなっている。
同協会では「春シーズンは歓送迎会の需要が見込めるのですが、2次会、3次会へと流れるお客様が少なく、伸び悩んだとみられます」という。
ビール需要は暑くなるこれからが本番。居酒屋などでは逆に、ビール出荷量の伸びが売り上げ増に結びつくことを期待している。
好調の新ジャンル、「家飲み需要」支える
2013年4月のビール系飲料の出荷量で、ビールに加えて好調なのが「新ジャンル」。根強い低価格志向を反映して前年同月比5.5%増の1390ケースとなった。4か月連続のプラスで、市場全体の37.3%を占めた。出荷量、市場構成比とも、4月としてはこれまでで最高。アサヒビールの「クリアアサヒ」やサントリーの「金麦」などの売れ行きがよかった。旺盛な「家飲み」需要を支えているとみられる。
一方、発泡酒は同6.8%減の530万ケースで27か月連続のマイナスとなった。発泡酒は、サントリーが12年7月に出荷を終了。他社も縮小傾向にあり、発泡酒のシェアは市場全体の14.2%にしぼんできた。
発泡酒からビールや新ジャンルへの「乗り換え」が進んでいるようだ。