日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)のいわゆる従軍慰安婦をめぐる発言が国外でも大きく報じられるなか、米軍のメディアも発言を報じた。
橋下市長は米軍に対して風俗業の活用を求めたとされるが、記事は日本の風俗業の仕組みを紹介した上で、米軍では風俗業関連施設の利用が固く禁じられている現状を強調した。
風俗産業に人身売買ビジネスの側面があるとも指摘しており、コメント欄には「大阪市長は人身売買と搾取を容認するのか」といった怒りの声も出ている。
「大阪市長:野蛮な海兵隊員は売春婦の利用を検討すべき」
橋下市長の一連の発言を取り上げたのは、「星条旗新聞」(Stars and Stripes)。編集権は米軍そのものから独立しているものの、編集部は軍関連施設にあり、読者も軍関係者が多い。「準機関紙」と位置づけられている。
2013年5月14日にウェブに「大阪市長:野蛮な海兵隊員は売春婦の利用を検討すべき」('Wild Marines' should consider using prostitutes)と題して掲載された記事では、問題とされた橋下氏の発言とともに、
「アメリカの占領軍に対しては日本政府が『特殊慰安施設協会(RAA)』を設置した」
といった橋下氏の米軍関連の発言も紹介している。記事では、マッカーサー元帥の指示でRAAが1946年に廃止されたことを指摘しながら、
「今では売春婦をひいきにすることは、軍事司法統一法典に基づき軍法会議の対象になる」
とした。
横須賀基地近くにも「単に肩をもむ以上の『マッサージパーラー』」
日本の風俗産業についても、具体例を示しながら紹介した。
「日本では、性交渉に代金を払うことは理論的には違法だが、その他の大半の性的サービスは合法のままだ。それら(性的サービス)はマッサージパーラー、ホステスバー、あるいは『ソープランド』システムで売買される。ソープランドとは、客を入浴させることで法の枠内にとどまってきた戦後の考え方だ。横須賀海軍基地の近くの『本町』地区にも、単に肩をもむ以上のことを行う、米兵の立ち入りが禁じられているマッサージパーラーがある」
また、少なくとも2人の米兵がマッサージパーラーで盗難の被害にあったとして注意を呼びかけた。
米兵は日本着任直後のオリエンテーションで、マッサージパーラーや同様の施設への出入りが禁じられていることを説明されるといい、在日米海軍の広報担当者は、星条旗新聞に対して、
「海軍は、売春婦、マッサージパーラー、ソープランドや、その他の性的サービスをひいきにする行為を許容しない。これらは、人権の尊重、品行方正、人間の尊厳といった我々の基本的価値観と完全に相容れないからだ」
と説明したという。橋下市長の発言は、米軍の方針に反することを改めて強調した形だ。
橋下市長の「皆自由意思」発言に反論する狙い?
記事では、性的サービスに従事する人は人身売買の被害者だとの見方も紹介されている。記事中では明示されていないものの、5月14日の橋下市長の、
「今の日本の現状からすれば、貧困からそこで働かざるを得ないと言う女性はほぼ皆無。皆自由意思だ。だから積極活用すれば良い」
という発言に反論する狙いがあるとみられる。
記事では、人身売買をなくすための活動をしているNPO法人「ポラリスプロジェクト ジャパン」の藤原志帆子さんが、興行、留学生、配偶者などのビザで東南アジアから来日した女性が、次第に経済的背景から性的労働に追い込まれる現状を指摘しながら、
「利用者に対しては、(人身売買の)犠牲者は微笑んでいたり、性的サービスを自発的に提供しているように振る舞うかもしれない。でも女性はお金を稼がなければならず、さもなければ住む場所を失ってしまう」
と訴えている。
コメント欄「大阪市長は人身売買と搾取を容認するのか」
この記事のコメント欄は、
「市長に同意する。もし合法で労働組合化されていれば、売春は今みたいな社会問題にはなっていないだろう」
といった声が少数みられるものの、
「ということは、大阪市長は人身売買と搾取を容認するのか。悲しくて哀れだ」
「この国が、いまだに第3世界にあることを示している。このばかは、米軍とのいかなる交流も禁じるべきだ」
といった橋下市長や日本に対してきわめて厳しい声が大半だ。
橋下市長は5月15日午前、
「法律上認められる風俗も、買春ではない。では、沖縄の米兵が繰り返す、性犯罪について、米軍に何を言うのか。止めろ止めろと言っても繰り返される犯罪をどうすれば良いのか。僕か現実を見据え、法律上認められる風俗業を活用したらどうだと進言した。他に具体策はあるのか。風俗=買春とは世間知らずだ」
とツイート。従来の主張を繰り返した。