日本は物価が安くなったから「年収150万円でも生きていける」――。そんな主張がネットで話題になっている。経済アナリストの森永卓郎さん(55)が新たな経済格差を記したベストセラー「年収300万円時代を生き抜く経済学」を出版しさまざまな議論を呼んでから約10年、日本はさらに低所得を意識しなければならない国なってしまったのだろうか。
人生楽しんだもん勝ちの時代が始まる?
「年収150万円」を言い出したのは東大経済学部を卒業し経済産業省に入省、12年9月に退職した宇佐美典也さん(31)。宇佐美さんは12年2月からブログで自身の給与明細を公表したことで名前が知られるようになり「30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと」という著書を書いている。退職した理由は、官僚は国民の「黒子」でなければならないのに目立ちすぎ、官僚に向かなくなってしまったことと、自分らしい新しい仕事にチャレンジしたくなったため、などとインタビューで語っている。12年11月には1兆円企業に成長させるという目標を掲げたコンサルタント会社トリリオン・クリエイションを設立している。
そんな宇佐美さんは2013年5月6日付けのブログで、
「物価は安くなったし、その気になればそれこそ『年収150万』でも生きていける。ぶっちゃけ松屋や吉野家や幸楽苑だって十分美味しい」
と書いた。なぜ年収150万円かといえば、自分たち20代、30代は日本経済がよくなるという希望がなくこのままユルユルと生きても社会保障などの破綻が見えているが、そうはいっても自分の人生を充実させて楽しむことはいくらでも出来るはずだ、という。これからはお金を稼ぐことだけが勝ちではく、
「なんというか本格的に『人生楽しんだもん勝ち』の時代が始まろうとしている気がします」
と書いている。つまりこれからの社会で「勝ち組」になりたいなら所得はあまり気にするな、ということらしい。
「日本人の給与が新興国並みに下がる予見」との意見も
ちなみに年収150万円とすれば1か月の収入は12万5000円ほど。宇佐美さんの12年3月23日付けのブログによれば、12年3月の手取り給与は37万円。都心に一人で暮らしているため家賃、管理費、電気代、水道代にかかる費用は月に11万円程度と書いている。年収150万円なら宇佐美さんはこの生活を続けられない。
ネットではこうした宇佐美さんの主張について、
「売れない役者、漫画家、芸人、音楽家とか100万以下の奴ゴロゴロいる。それでも売れようと頑張る奴は人生楽しそう」
と賛同の意見もあるのだが、大半は150万円で暮らして行くのは難しいし、生活保護よりも低く年収を設定するのはおかしいし、吉野家などの外食すらお金が足りなくて行けない、というものだった。また、宇佐美さんが元官僚だからこうした発想になるなどの批判も多く、
「東大卒の元官僚に言われたら腹立つわ。なにが年収150万で生きていけるだ」
「貧乏でも幸せ、これは日本人の給与水準が将来的に新興国並みに下がるということだね」
「低賃金で文句も言わずに働く奴隷を沢山作ることが日本の繁栄につながる、というのが支配者階級のガチの計画」
などといった意見もネットの掲示板やブログに出ている。