大阪市の橋下徹市長(日本維新の会共同代表)の発言が、国外へも波紋を広げている。橋下氏がいわゆる従軍慰安婦について「必要だった」と発言した点がクローズアップされた結果、国外のニュースサイトでもかなりのアクセスを集めている。橋下氏はツイッターで丁寧な説明を繰り返しているものの、国外には短絡的な形で発言が伝わる可能性がある。
東亜日報「日本政治家の妄言病が再発」
2013年5月14日の国外メディアも、こぞって橋下氏の発言を取り上げた。例えば韓国の東亜日報は
「日本政治家の妄言病が再発」
として、橋下市長の発言や自民党の高市早苗政調会長の歴史認識をめぐる発言を批判。
中国外務省の洪磊・副報道局長も、定例会見で
「日本の政治家が人類の良識と歴史的正義に挑戦する発言を公然と行ったことに驚きと強烈な憤慨を示す」
と強く批判した。
影響は東アジアにとどまらない。AP通信は「大阪市長:戦時の性奴隷は必要だった」という見出しで発言を報じており、この記事は世界中の英語圏のニュースサイトに配信された。
BBC、橋下氏が「女性が売春婦になることを強いられたシステムを『必要』と表現」
英BBCのニュースサイトのランキングでは、5月14日16時現在、橋下市長の発言を伝える記事は「共有(シェア)された記事」の中ではトップで、読まれた回数を表すランキングでは2位。1位は、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がんのリスクを減らすために両乳房切除手術を受けていたことを報じる記事だ。
このBBCの記事のリード文は、橋下氏が
「第二次大戦の軍隊のために女性が売春婦になることを強いられたシステムを『必要』と表現した」
とあり、「強制売春は必要」といった短絡的な形で、発言が広く世界に伝わっている可能性がある。
午後には橋下氏がツイッターを更新し、
「悲劇であるにせよ、今は日本軍だけが特殊な対応をしていたと世界では見られている。反省はしなければならないが、事実として違うのであればそれは言わなければならない」
「批判者は、風俗業=売春業=性行為と短絡的に考えているね。日本人は賢いから、性行為に至る前のところで、知恵をこらしたサービスの提供を法律の範囲でやっているよ。そして今の日本の現状からすれば、貧困からそこで働かざるを得ないと言う女性はほぼ皆無。皆自由意思だ。だから積極活用すれば良い」
と従来の主張を繰り返し、米軍が風俗業を活用すべきだとの考えを改めて強調した。
なお、米軍では1995年の少女乱暴事件をめぐり、リチャード・マッキー米太平洋軍司令官(当時)が
「彼らは(犯行に使った)車を借りる金で女が買えた」
と発言し、更迭されたという経緯がある。このことも、橋下氏の提言に司令官が「凍り付いた」背景にあるとみられる。
橋下氏はツイッターで、
「しかし日本の識者と言われる人も、人の話を聞かないね。吉永みち子さんも、全く人の話を聞いていない。『当時は必要だった』と、今容認していることは別でしょ。僕も今は容認していない。ただ当時の戦時下においては世界各国の軍でどうだったのか。日本だけが特殊だっったのか(原文ママ)、そこを指摘したんだ」
と、自分の主張を精査するように求めているものの、言語の壁もあり、これらの主張がきめ細かく国外に伝わる可能性は低いとみられる。