視覚に訴えるものは英語化が進みやすい?
日本語がそのまま英語化した例として、柔道が「judo」、禅は「zen」、津波が「tsunami」といった語句がよく知られている。トヨタ自動車の生産方式で特徴的な「カイゼン」がそのまま「kaizen」として、またグループリーダーを表す用語に「hancho」(班長)が使われることもある。最近では携帯電話の「絵文字」が「emoji」として通用する。言語学が専門の大学教員に聞くと、「欧米にはない日本的な概念が英語化しやすいのではないか」と話す。「班長」や「絵文字」は、欧米からすると日本独自の発想だったのだろうか。
前出の翻訳者は、視覚に訴えるものや実際に体感できるものに英語化が一気に進む可能性を見いだす。例えば「tsunami」なら、2004年のスマトラ沖地震で甚大な被害をもたらした津波により世界的にその意味が理解されたようだ。「manga」「anime」であれば、実際に手にとって読むマンガやアニメから、自然にその言葉が吸収されていくというわけだ。
もしかしたら「jinja」「jingu」も、来日して神社などを訪れたうえでその言葉の意味を正しく理解した人が増えれば、今後世界に広まっていくかもしれない。一方、「kami」の場合は目に見えるわけではなく、極めて概念的だ。それでも取材に応じた翻訳者によると、「日本独自の『kami』とは何か、時間をかけて繰り返し刷り込む努力を続けていけば、その分野に興味を持つ人たちに徐々に浸透していくと思います」と話した。