政府が大学生の就職活動の開始時期を遅らせるよう、経済界に要請していることについて、IT企業など約700社が加盟する新経済連盟の三木谷浩史代表理事が異論を唱えている。
一方、大手企業が加盟する日本経済団体連合会など経済3団体は安倍首相からの直接の要請を受けたこともあり、すでに会員企業に周知する意向を示している。経済界で対応が割れる可能性が出てきたことで、大学生の就活に混乱が生じるかもしれない。
「外資系企業に優秀な人材をとられる」という懸念
政府は、大学生の就活の解禁時期を現在の「大学3年生の12月」から、「大学4年の4月」に繰り下げるよう要請することを考えている。面接などの選考開始も、4か月遅い4年生の8月になる見通し。
大学3年生のときから会社説明会などに追われると、授業に支障を及ぼすなど、大学側の不満は根強い。海外では4年生の夏まで授業のある大学が多いので、就活の出遅れを恐れて海外留学を見送る学生も少なくないとされる。
4月解禁、8月選考開始になれば、大学生は学業に長く集中できて、留学もしやすくなる。国際的な人材を求める企業にもプラス、というのが「繰り下げ派」の言い分。政府は2013年5月にも経済界に正式要請する見通しで、早ければ15年3月の卒業予定者(現在の3年生)から適用される可能性がある。
これに対し、新経連の三木谷代表理事は5月8日の記者会見で、「会員企業に要請することにならないと思う」と語った。
三木谷代表は「外資系企業に優秀な人材をとられるのではないか」と懸念を表明。「インターンシップやビジネス教育が必要という流れに逆行している」とも指摘した。4月にも「前近代的な感じがする」と話しており、統一ルールで採用活動を規定することに対して冷ややかにみていた。
企業の採用活動のルールは、経団連の「採用選考に関する企業の倫理憲章」にあるが、新経連にはこうした倫理憲章はない。ただ、会員企業の中には経団連と重複して加盟している企業や同業他社の動向に準じて、あるいは慣習として12月に解禁している企業はある。基本的には、会員企業がそれぞれの判断で採用活動を行っている。