経済産業省は、原発の使用済み核燃料を再処理した後に発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定方法を見直す方針だ。5月中にも経済産業相の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」の小委員会を開催し、見直し作業に着手する。
経済産業省は2000年に特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(特廃法)を制定したが、「核のごみ」の最終処分場が決まらないため、自治体の立候補を待つ現行制度を改め、政府主導で処分地の選定を進める考えとみられ、世論の反発も予想される。
地下300メートルより深い地盤の安定した地層に最終処分
日本の現行のエネルギー政策では、原発で燃やしたウランなど使用済み核燃料は、全量を再処理してプルトニウムを取り出し、MOX燃料(ウランとプルトニウムを混ぜた混合酸化物燃料)に加工して、既存の原発でプルサーマル発電として再利用することになっている。使用済み核燃料を再処理した後に残るのが、核のごみである高レベル放射性廃棄物で、日本ではガラスと混ぜ固化体として金属製の容器に詰め、地下300メートルより深い地盤の安定した地層に最終処分することになっている。高レベル放射性廃棄物の放射能はケタ違いに強く、「放射能が十分に減衰するまでに数万年かかるため、人間の生活環境から厳重に隔離する必要がある」(経産省資源エネルギー庁)からだ。海外ではスウェーデンとフィンランドが使用済み核燃料を地下に埋める最終処分場を決定したが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が先進国で決まった先例はない。
青森県は高レベル放射性廃棄物の実質的な最終処分場となることを拒否
日本の電力会社が原発で利用した使用済み核燃料は、これまで英国とフランスに依頼して再処理してきたが、今後は電力会社が出資する日本原燃が青森県六ヶ所村で営業運転を目指す再処理工場でMOX燃料を加工、高レベル放射性廃棄物をガラス固化する方針だ。既に海外で再処理された日本の高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)は国内外に約2500本あり、「これまでに原発から出た使用済み核燃料を再処理すると、約2万5000本のガラス固化体が生まれる」(資源エネルギー庁)という。
この計画は日本原燃の再処理工場のトラブル続発で遅れに遅れている。営業運転はこれまでに何度も延期となり、実質的な運転開始の目処はたっていない。その貯蔵管理施設に6075本まで一時貯蔵できるが、青森県は高レベル放射性廃棄物の実質的な最終処分場となることを拒否しており、将来的には別の場所に最終処分場を作る約束になっている。
12市町村が「検討」などと報道されたが、正式な応募には至らず
その最終処分場の選定が全く進んでいないから深刻だ。特廃法では、経産省の認可法人「原子力発電環境整備機構(NUMO)」が全国の市町村の応募を受け付け、選定作業を進めることになっている。応募の中から、NUMOが過去の地震の記録など文献の調査からボーリング調査、地下施設の調査など三段階の調査を行い、2010年代前半に候補地を絞り込み、2028年前後には建設地を選定する予定だった。
ところが、2002年12月に始まった最終処分場の公募は、高知県東洋町が2007年1月に正式に応募したものの、議会や住民の反発を招き、町長選を経て同4月には応募を取り下げた。資源エネルギー庁によると、これまで福井県和泉村、高知県佐賀町、熊本県御所浦町、鹿児島県笠沙町、長崎県新上五島町、滋賀県余呉町、鹿児島県宇検村、高知県津野町、長崎県対馬市、福岡県二丈町、鹿児島県南大隅町、秋田県上小阿仁村の12市町村が「応募検討」などと報道されたが、住民の反対で正式な応募には至らなかった(市町村名は2003~07年の報道当時)。
安倍晋三首相率いる自民党政権は、使用済み核燃料を再処理して活用する核燃料サイクルを堅持する姿勢を崩していない。このため経産省は民主党政権の脱原発路線を改め、再び原発推進に回帰しようとしているが、処分地選定の遅れに焦りを隠せない。最終処分地選定の見直しでは政府が大きく関与する方向に転換する可能性が高い。