日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は2013年5月10日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。2020年東京五輪招致委員会の理事長を務める竹田氏は、外国人記者を前に東京の安全性や、半径8キロ圏内に会場の大半が収まる交通の便の良さをアピールした。
記者からの質問は、東京都の猪瀬直樹知事が立候補都市のイスタンブールを批判するとも取れる発言をし、後に謝罪した問題に集中。竹田会長は「国際オリンピック委員会(IOC)が『この件は終了した』と伝えてきている」と繰り返し、発言が招致活動に与えた影響の評価を避けた。
「猪瀬知事は多少の発言をしたが、すでに謝罪している」
竹田氏は、猪瀬発言を念頭に置いているのか、
「残念ながら、他の立候補都市との比較はできない」
という言葉を何回か口にし、慎重姿勢。猪瀬発言に対する評価や招致活動への影響について再三にわたって見解を求められたが、
「2020年東京五輪招致委員会は、他の立候補都市にコメントすることを禁じたIOCのルールを尊重している。猪瀬知事は多少の発言(some remarks)をしたが、すでに謝罪している。IOCも『この件は終了した』と伝えてきている。可能な限りベストの大会を行うことに完全に集中したい」
といったフレーズを少なくとも3回繰り返した。猪瀬発言への評価を避けることで、影響が長引くのを避ける狙いがあるとみられる。
「地震はどこでも起こる」に失笑も
天災のリスクも、国外からの重要な関心事だ。東海地震や富士山が噴火するリスクについて問われると、竹田氏は
「地震は、世界中どこでも起こる。主な競技場や関連施設は、世界で最も厳しい耐震基準に基づいて建築されていることを強調したい。東京のインフラはきわめて耐震性が高い。2020年の日本については、地震の心配はしないでほしい」
と「地震に強い東京」を強調。だが、東海地震が発生した際の中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)への影響について突っ込まれると、明らかにいらだった様子で、
「地震はどこでも起こりうる。なぜそんなにはっきりと、東海に地震が来ると言えるのか。誰も分からない」
と述べ、会場からは笑い声があがる一幕もあった。
政府の地震調査委員会の13年の試算では、マグニチュード8程度の東海地震が30年以内に発生する確率は88%だとされている。
それでも、
「何か心配事はないのか」
との質問には、竹田氏は
「no concern」(心配ない)と断言し、会見場を後にした。