高橋洋一の自民党ウォッチ
川口氏解任にみる国会の「時代錯誤」  海外渡航ルール、もっと柔軟に見直しを

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川口氏の渡航と国益の有無

   こうした時代錯誤のルールをもとに、与野党がお互いの主張を言い合っているのは滑稽でしかない。それでも、その背後にある国益について、議論が深められたのであれば少しの救いもあるが、国益についての議論は不十分だ。

   野党は、渡航ルール違反を言うので、川口氏の滞在延長による国益はないという主張になる。一方、自民党は形式的な渡航ルール違反は認めるものの、それを上回る国益があったという。

   野党の主張は、川口氏の外相時代におけるパフォーマンスの悪さを問題にし、さらに、そもそも外交は政府が行うもので議員はすべきでないということから、国益はないと判断している。一方、自民党は、アジア各国の外相経験者で構成される国際的なシンポジウムに出席し、日中関係が主な議題だったので、川口委員長の滞在期間延長は国益があったという。今回の国益については、国会議員は外交に口出すなというのは極論としても、どちらの言い分にも一定の理があり、判断が付きにくいところだ。

   国益論はともかくとして、今回は結局、国際常識から逸脱した渡航ルールにより、川口氏は委員長を解任された。これを今さらとやかくいっても仕方がないが、これを契機として、渡航ルールなど国会運営をもう少し合理的に見直したらどうだろうか。国会審議は意外とまばらで集中的でない。定足数要員として質問もできずに国会に縛られるだけでは、国会議員の能力も活用できないので、もっと選択と集中を行うべきだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。


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