安倍晋三首相が目指す憲法96条の改正問題が、米国務省の記者会見でも話題にのぼった。質問をしたのはアジア系の女性記者で、報道官は何度も「日本に問い合わせてほしい」と回答しているにもかかわらず、改憲についての米国の見解を執拗に求めた。このことから、日本のネット上では「韓国人記者がしつこい」といった指摘も出ている。
流ちょうな英語で質問
質問は、2013年5月2日のベントレル副報道官代理の定例会見で出た。記者が安倍首相の96条改正問題に触れながら、
「日本の憲法は、第二次大戦後に米国が草案を作成した。これ(改憲に向けた動き)は、当時決められたルールに対して日本が不満を持っていることを表していると思うか。米国はこの行動を支持するか」
と、比較的流ちょうな英語で質問したのに対して、ベントレル氏は
「日本の憲法については、日本に問い合わせてみてほしい。しかし、我々は日本と長い間深い同盟を結んでいる。同盟は共有された価値観と相互信頼に基づいている」
と、原則論でかわした。記者は、
「この時期の憲法改正を支持するか」
と食い下がったが、
「これは、日本が内部的に検討していることだ」
と同様の回答が繰り返された。
日米同盟の重要性を繰り返す
それでも記者は、安倍首相の真の狙いは9条の改正にあると指摘されていることや、国会答弁で「侵略の定義は定まっていない」と話したことを挙げ、
「米国はこれらの動きに対して警戒しているか」
と、誘導するともとれる質問をぶつけた。それでもベントレル氏の立場がぶれることはなく、米国政府としての賛否を示すことは避けながら、日米同盟の重要性を繰り返した。
「繰り返すが、内政問題について情報は日本政府に問い合わせてほしい。(オバマ)大統領や(ケリー)国務長官が、日本との礎になる同盟関係を結んでいることや、その重要性について語っているのを聞いているはずだ」
やり取りを聯合ニュースや東亜日報が報じる
この記者の国籍は不明だが、一連のやり取りを韓国の聯合ニュースが記事にしている。記事では、ベントレル氏の答弁について「言葉を惜しんだ」「原則論で答弁した」と表現。発言の背景については、
「日本の平和憲法改正について、韓国、中国などから懸念の声が高まっているが、日本との関係や事案の敏感さなどを考慮し、これに対する賛否を明らかにするのは適切ではないとする立場を打ち出したとみられる」
と論評。東亜日報も、
「(米国が)日本の改憲を黙認するのは、財政難による米軍の東アジア戦力の空白を日本の自衛隊に埋めさせようという思惑がある」
と主張した。
会見録を確認する限りでは、韓国外務省は公式の反応を示していないが、中国外務省の華春瑩報道官は5月2日の定例会見で、
「日本が歴史に対して責任ある態度で深く反省し、実際の行動でアジア諸国と国際社会の信頼を得ることを望んでいる」
とけん制した。