内閣府の調査でも経済基盤が要因なのは明らか
内閣府が2011年にとりまとめた「少子化に関する国際意識調査 報告書」からも、若年層が出産を「個人の選択として、したくない」というよりもむしろ「外的要因から諦めている」傾向は浮き彫りになっている。日本において「結婚したら自分自身の子どもは必ずもつべき」と考える人の割合は比較的高い。ところが、希望する子ども数と実際の子ども数とのかい離もまた大きいのだ。
関西学院大学の西村智教授(労働経済学)は報告書の中で、「かい離が配偶関係や就業形態によって大きく異なり、低出生率の背景に制度的・構造的な要因がある」と、低出生率は、個人の選択が集約された結果に留まらないことを指摘。「出産を諦める主な理由は保育や教育の費用がかかりすぎること、育児と仕事との両立が難しいことである」と解説した。
また、中京大学の松田茂樹教授(社会学)も調査結果の分析から、日本の合計特殊出生率が低い理由を「日本の若年層の結婚・同棲の開始が遅れていることにあるといえる」と割り出し、この要因を「経済基盤の弱さ」だと述べた。
「日本の非正規雇用者の男性や収入の低い男性は、アメリカ、フランス、スウェーデンよりも大幅に結婚・同棲経験率が低い。経済基盤の弱い者がカップル形成を特に送りにくいのがわが国である」
こうしたことを踏まえてか、産経新聞の報道には「内閣府は経済事情などを理由になかなか結婚に踏み切れない状況の改善にも取り組む方針で、新婚夫婦への大胆な財政支援に乗り出す」とも書かれているが、「これをきちんとやれば、手帳は必要ない」と「手帳」に対する疑問は残る。ネットでは「女性」=「子どもを産むもの」として一律に手帳を配布することは、セクシャルマイノリティや、生殖機能を失った人などのことを考えていないとの反発も出ている。