米国のブログサイト「ハフィントン・ポスト」(ハフポスト)と朝日新聞が合弁で設立した「ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン」は2013年5月7日、ハフポストの日本版サイトをオープンした。
午後2時から都内で開かれた記者会見で、従来のニュースサイトとの一番の違いとして強調されたのが、「ユーザーの声」。本国版編集長のアリアナ・ハフィントン氏は「ジャーナリスティックな記事に加えて、プラットフォームとしての役割を果たす」と説明するが、いわゆる「炎上問題」への対策が鍵になりそうだ。
ブログの寄稿は著名人にこだわらない
サイトは「ブログ記事」「ニュース記事」「ソーシャルコメント」の3つの要素で構成され、ブログには佐々木俊尚氏、津田大介氏、堀江貴文氏ら70人以上が参加する。ただ、ハフィントン氏によると、
「一番ブログとして寄稿してほしいのは、普通の人。ここにはヒエラルキーはない」
「意見だけを求めているのではない。ストーリー(物語)を語ってほしい。ハフポストに『語りの場』として出してほしい」
と、必ずしも著名人の起用にはこだわらず、多様な背景を持つ人に寄稿を求める。
日本版の松浦茂樹編集長は、
「従来のネットメディアの延長線上にあるので、見た目は大きく変わっているところはないかも知れない」
と話す。実際、現時点で掲載されているのは、「ゆるキャラは、コスト管理もユルかった?」といった、新聞社や通信社の記事に論評を加える形式のものも多く、すでに「まとめサイトみたいだ」といった声も出ている。
松浦氏は、他サイトとの差別化のポイントは「ユーザーの声」だと強調。現状のネット空間のコメント欄は「残念に思われることも多い」が、米国版で実現されている「ネガディブな意見が淘汰され、前向きなコメントが集約される」仕組みの実現を目指す。
「ポジティブな空間では、ネガディブなコメントは淘汰される」
参加型のニュースサイトをめぐっては、06年にオープンしたオーマイニュースの日本版が「炎上」の末、09年に閉鎖に追い込まれた経緯がある。
炎上防止策については、松浦氏は
「誹謗中傷は表示させない。AとBの(対立した)意見がでた場合、下に引っ張って前に進まないことがある。(コメントがつく記事の)問いかけの工夫の余地もある。ポジティブな空間では、ネガディブなコメントは淘汰される」
と述べ、すでに「ハフィントン・ポスト日本版は失敗する」(メディア評論家の藤代裕之氏)といった悲観的な記事が出ていることについても、
「愛があふれた、叱咤激励の記事。そこは真摯に受け止めて、次に進みたい」
とした。
収入の柱は広告収入を想定する。ザ・ハフィントン・ポスト・メディアグループ CEOのジミー・メイマン氏は、
「日本が広告市場としても大きなマーケット。電通や(子会社の)cciと組んでいるが、(現状は)広告市場の15%のみがオンライン。今後、その部分が大きく伸びてくる」
「日本は新聞マーケットとして大きい。オンラインへの広がりもある。朝日新聞と組んで、その一翼を担いたい」
と述べ、2年で損益分岐点に到達したい考えだ。