プラチナチケットになった「国民栄誉ショー」 松井の巨人監督就任への「みそぎ」は済んだか?

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松井の受賞は巨人からの「復縁」プロポーズ

   長嶋はともかく、松井の受賞にはさまざまな声が上がった。「早すぎる」から「なぜ、松井なの?」まで。松井には何の責任もないのだが、松井はかなり神経を使っていた、と聞く。

   それは彼の受賞挨拶に表れていた。

   「受賞に恐縮している」と前置きし「私は王さんや衣笠さんのように世界記録を達成していません。また長嶋さんのように全国の野球ファンを熱狂させた選手でもありませんでした」

   聞いていて気の毒に思った。自分の球界での存在価値をわざわざ示したのである。誠実で善良な人間なのだな、と改めて感じた。まだ体が不自由な長嶋を気遣いう姿に感動を覚えた関係者は多かったことだろう。

   松井はその後「日本とアメリカの名門チーム(巨人とヤンキース)でプレーしたことを誇りに思う」と付け加え「野球を通じて知り合った人々に感謝したい」と締めくくった。松井らしい気配りに満ちた名スピーチだった。

   昨年暮れ、現役を引退した松井に対し、巨人のボス渡辺恒雄氏は「監督に迎えたい」と明言した。それに応えるように、松井は「巨人を辞めてヤンキースに行ったとき、二度とここへ戻れるとは思っていなかった」と、退路を断っての大リーグ行きだったことを振り返り「巨人のことを忘れたことはなかった」と語った。

   巨人にとって松井が去ったときのショックは非常に大きなものだった。4番打者を失ったのだから当然だろう。背番号55は若い選手が付け、縁は切れたことを暗に示した。

   それだけに、引退式と国民栄誉賞の授与式で、手打ちとなったようである。松井の巨人監督就任は真実みを帯びてきた。少なくとも他球団は松井に手出しはできなくなった。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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