「ワシントン・ポスト」紙苦境続く 読者減と広告減の二重苦にサイトの課金制導入

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   「ワシントン・ポスト」といえば1970年代のウォーターゲート事件の調査報告でジャーナリズムの雄として世界的な名声を獲得した米国を代表する日刊紙だが、新聞業界を取り巻く構造不況の中で広告収入や発行部数の低下に歯止めがかからず、その将来は不安に包まれている。

   2013年5月3日(現地時間)に発表された2013年1~3月期の決算報告によれば、売上高は前年同期から4パーセント減り4億8600万ドルだった。印刷版の広告収入の減少が最大の不振要因で、一年前の水準から8パーセントほど落ち込んだ。電子版(「ワシントン・ポスト・ドットコム」)やウエブ誌「スレート」でのオンライン広告は8パーセント増加して順調だったが、電子広告の全広告収入に対する割合は35パーセントでしかなく、印刷版広告の不振を補うことはできなかった。

平均発行部数は45万7000部で7.2パーセント減

   同紙は自身を首都ワシントンの「ローカル紙」と位置づけるユニークな新聞だけに、地元民による購読がその基盤になっている。それだけに読者の紙離れという現象は、ワシントン・ポストのビジネスモデルを根底から揺さぶる。同四半期の数字を見ると、週日の平均発行部数は45万7000部で7.2パーセントのマイナス。ワシントン・ポストは1月に料金値上げを実施し購読者数の低下による売上減を補填したが、新聞を消耗させる「いたちごっこ」に終わってしまう可能性がある。

   新しいビジネスモデルを模索する一方で、ワシントン・ポストは13年夏からウエブサイトの課金を始める計画だ。最大のライバル「ニューヨーク・タイムズ」紙が2年前に導入した「メーター制」と呼ばれる課金制度(有料会員でなくても毎月限られた数の記事を無料で読むことができる)が成功し、新たな収入源へと育っている。オープンウエブ支持のワシントン・ポストもついに課金の軍門に下るわけだ。

   また、同紙ではホワイトハウスに近くワシントンの名所の一つになっている本社ビルの売却が検討されているという。同ビルに併設された印刷工場は90年代末に閉鎖され、老朽化したビルにしがみつく理由はないという論理だが、ワシントン・ポストに象徴される歴史のひとこまが終わろうとしているのだろう。

(在米ジャーナリスト 石川幸憲)

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