「メタボリック症候群対策に効果がある」と、「トマトブーム」が続いている。
トマトジュースなどでは「特需」が起こり、飲料大手のカゴメは2013年3月期決算で創業以来、過去最高益をたたき出した。
「トマト味」人気、1114品ものレシピ
トマトブームのきっかけは、2012年2月に京都大学とキッコーマン傘下の日本デルモンテが発表した研究にある。
京大大学院の河田照雄教授らがトマトの実とジュースの成分を分析したところ、脂肪の燃焼を促進する不飽和脂肪酸の一種(リノール酸誘導体)が含まれていることを突きとめた。この物質を化学的に合成し、肥満マウスに与えたら、4週間で血液と肝臓の中性脂肪が約30%減少したという。
トマトにはカロテンやリコピンなどの抗酸化機能のある成分も含まれており、それが脂質異常症や糖尿病にも効くといわれている。この研究で、改めてトマトが健康によいことが確認された形だ。
これをきっかけに、生鮮トマトやトマトジュース、ケチャップなどを買い求める人が相次いだ。トマトはそのまま食べてもよし、ジュースにして摂ってもよし、煮ても焼いてもいいので料理にも使いやすい食材でもある。
「トマト味」の料理を好む人は少なくなく、2009年には女性を中心に「トマト鍋」が流行した。飲食店の情報サイト「ぐるなび」が行った「2012年冬のトレンド鍋予報」では、再びトマト味の「海鮮トマト鍋」がトップとなり、根強い人気をみせた。「トマト味」は鍋の定番になりつつある。
「鶏のトマト煮」や「トマト味の野菜スープ」、パスタにもよく合うトマト味は、レシピのバリエーションも広げる。料理サイトの「クックパッド」の「トマト味のレシピ」に寄せられたレシピは、じつに1114品もある。
なじみがあり、使い勝手のよい野菜であることが息の長いブームとなっている要因のようだ。
「子どもの頃に、よく飲んでいた消費者が戻ってきた」
こうした「空前」のトマトブームを背景に、飲料大手のカゴメの2013年3月期決算は、当期純利益が前期比53.7%増の64億円になり、1899年の創業以来の最高益となった。売上高は9.0%増の1962億円で、増収増益だった。
なかでも、トマトジュースは全国で一時品薄になるほどの人気を集め、売上高は通期で5割増。相乗効果で、野菜飲料全体も過去最高の960億円を記録した。
同社によると、トマトジュースの売り上げのピークは1970年代後半。80年代に入ると野菜ジュースを含め、さまざま飲料が登場して需要が縮小した。2011年はピーク時の4割まで落ち込み、ここ数年は需要層の多くをヘビーユーザーが占めていた。
ブームに乗って「トマトフェア」などの露出機会を増やしたことで、「子どもの頃に、よく飲んでいたという消費者が戻ってきた」と、カゴメはいう。昔からの、ノーマルタイプのトマトジュースが一番売れているそうだ。
トマトケチャップはメニューを提案することで、12年秋以降に販売量を伸ばし、「基本のトマトソース」は2013年3月に、使いやすく環境負荷も低い紙容器の商品を投入した。
市場が縮小しているギフト事業には、スイーツの「トマトの焼き菓子 トマッティーニ」を展開。これが当たりギフト事業の売上高は前期比4.0%増の79億円。1998年から参入している生鮮野菜事業では「生鮮トマト」を生産、販売しているが、その売上高も前期比17.0%増の89億円と、いずれも過去最高となった。