カンニングしたほうが「成績が上がる」 UCLA教授が仕掛けた驚きの試験

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   アメリカの名門大学・UCLAの試験中に、学生たちがお互いに話し合い、答案を書き始めた――こんな「カンニング行為」がインターネット上で話題になっている。

   最近なにかとネットを騒がす「おバカ大学生」が海を越え、アメリカにも出現したのかと思いきや、実はこれ、教授があることを調べるために仕掛けた「実験」なのだという。

教授の予想よりも成績が20%良かった

   UCLAのピーター・ノーナクス教授が2013年4月24日、Popular Science誌(電子版)上の、「『ゲーム理論』の試験で私が生徒にカンニングをさせたわけ」と題した記事で明かしたところによると、試験の出題は、

「もしも自然淘汰を通じた進化がゲームであるとすれば、プレイヤー、チーム、ルール、目的そして成果はなんであるか?」

というものだった。

   学生は試験が始まるなり一箇所にかたまり、ディベートを開始した。仮説をたて、有力と思われるものを選別し、それを支える証拠を付け足していった。多くの学生たちはそうして出来上がった1つの答えを共有することにした。何人かが段落を手分けして書き、同じ評価を得るために全員で署名をして、1つの答案を完成させた。

   そして、その成績は教授が予想していたよりも20%以上も良かったそうだ。

   学生が試験中におこなった行為は普通なら「不正行為」とみなされるが、ノーナクス教授は今回に限っては自身が許可したもので「完全に合法」と話す。

   そればかりか、教授は試験の1週間前に、学生に

「なんでも、動物行動の専門家を含めて、誰でも持ち込み可」

だと宣言していた。

   インターネットを利用しても、お互いに話し合っても、以前にコースを受講していた友達に電話しても、教授にわいろをおくってもいい(受け取らないが、上に報告もしないという)。飼い犬を誘拐したり、脅迫文を送ったり、あるいは暴力でおどしをかけるといった、犯罪に触れるような行為以外はOKだったそうだ。

「試験自体が学びの体験になる」

   なぜこんな奇妙なテストをおこなったのか。実は、講義でもあつかった「ゲーム理論」の実験のためだった。ゲーム理論とは、利害が必ずしも一致しない状況において、複数の主体の行動の最適戦略を数学的に記述する理論。行動生態学でも用いられる。

   教授は「学生に行動生態学者としての考え方を体感してもらいたい」、学生は「試験でいい成績をとりたい」――試験におけるこの二者の「利害」を同時に満足させることができるかを観察するために、あえてこの奇抜な試験をおこなったのだそうだ。

   最初に「不正行為OK」と聞いた学生は当然最初はショックを受けた。ジョークを言っているに決まっているなどと考えていたが、次第に落ち着いて、ディスカッションをはじめた。その中で「人と協力することで効果をあげられるのか?大きなグループは、特定のタスクを与えられた小さなグループより良い結果を残すか?何にも準備していない生徒が、デキる生徒の答案を丸パクりしたら?テストが食うか食われるかのハンガーゲームになるのか?」といったことを考え始めた。

   教授によると学生はこれで「生のゲーム理論」を体感できたのだという。

「結局、学生らはアリやハチのような社会的昆虫の何億年も続く知恵を学んだのです。つまり、ある種の競争に勝つためには、競争するよりは協力したほうがいい。さまざまな意見を通じて生まれた連帯は、どんなに優れた一人きりの競合相手よりも強い」

   さらに、教授は試験についてこんな考え方を書いていた。

「最高の試験というものは、何を生徒が知っているかを探るものではなく、新たな考え方を引き出すものでしょう。覚えていることをオウム返しすることよりもずっとすごいことです。試験自体が学びの体験になる―それがものごとをより深く理解することにつながるのです」
姉妹サイト