治らない難病の一つ、網膜色素変性症の治療に国を挙げて取り組んでいるキューバの医師が2013年4月28日、名古屋市で講演した。愛知視覚障害者援護促進協議会 (高柳泰世理事長) が主催、眼科医や患者からたくさんの質問が飛んだ。
世界的には決定的な治療法がないとされている
網膜色素変性症は遺伝性・進行性の病気で視野がどんどん狭くなって失明する。宮尾登美子さんの小説「蔵」の女主人公・烈の病気で知られる。日本ではごく一部の眼科医が漢方薬治療をしているが、世界的には決定的な治療法はない、とされている。
講演したのはキューバの国際網膜色素変性症センターのラザロ・ペレスアギアル副院長 (57) 。キューバではこの病気はすべて登録され、3043家族5243人の患者さんがいる。正確な原因は不明だが、3タイプの遺伝が54%、残りは家族で1人だけの孤発型という。
まだ視力がある患者を対象とするキューバ方式の治療法は1987年に始まった。 1回の手術後、オゾン療法、電気刺激法でコントロールし、ビタミン剤やサプリメントも用いる。16%は視野が改善、76%は進行せず、8%は悪化した。また36%は視力が改善した。
手術はキューバで開発されたもので、眼球の後ろにある脂肪組織を網膜の下の脈絡膜に移植する。脂肪組織はさまざまな物質を作っており、血流や酸素を増やし、免疫を高め、血管や神経の回復も期待できる。オゾン療法は採血した本人の血液にオゾンガスを加えて点滴で戻す、など。電気刺激療法は両まぶたの上と両手のツボの計4カ所を専用の米国製機器で刺激する。両治療法は手術翌日から毎日1回ずつ2週間程度続け、キューバの患者はその後、毎年2回受ける。
ペレスアギアルさんはこれまで109カ国2万人以上を手術した。外国人の場合、追加の治療が行われないことが多く、効果は一定せず、キューバ方式を疑問視する医師も少なくない。また、国際医学雑誌への投稿は、最終的にほとんど掲載拒否されている。
「私たちはキューバ方式に誇りをもっている。日本の患者さんも医師も積極的に受け入れたい」と話していた。
(医療ジャーナリスト 田辺功)