アベノミクスによる株高で、「プチバブル」が巻き起こっている。長らく不況にあえいでいた百貨店では高級腕時計や宝飾品などが売れ、かつて「スーパーカー」と呼ばれたフェラーリやランボルギーニといったラグジュアリースポーツカーも売れている。
購入している人は、株式などで資産を運用しているような、いわゆる資産家層だという。
好調なマンション販売受けて、家具やカーテンも売れる
円安・株高を背景に、高額商品の売れ行きが好調だ。百貨店では高級腕時計や宝飾品、ラグジュアリーブランドのスーツやドレス、バッグなどの販売が前年に比べて2ケタ増で伸びている。
三越伊勢丹ホールディングスは、「価格帯で100万~300万円くらい。40歳代より上の顧客層を中心に売れています」と話す。
高島屋も、「ラグジュアリーブランドが14%増、腕時計や宝飾品が20%強増え、当社の場合は呉服も高級品にあたりますが、それも1%増えました」という。さらには都心のマンションなどの販売が好調なのを受けて、大型家具やカーテンなどのリビング用品も好調だ。「不動産の動きが活発になってくるとさらに恩恵に授かれるのですが…」と期待する。
高島屋は「これまで買い物を抑えていたこともあって、株などで資産を運用しているようなお客様が景気回復ムードから高額品を購入しています」とみている。東京・日本橋店では資産家や所得の高い外商客を多く抱えているが、「最近は(外商客ではない)そのご子息の世代(40歳代くらい)の利用も増えています」という。
ここ数年、富裕層向けの高級腕時計や宝飾品などは外国人観光客らの利用もあって堅調に推移してきた。「最近は東南アジアからの外国人の利用が増えています」(三越伊勢丹HD)とし、それに株高で資産が増えた顧客が加わって、百貨店の売り上げを支えているようだ。
一方、3000万~5000万円台といった高級外車も売れている。日本自動車輸入組合によると、2013年1~3月期のフェラーリの販売台数は144台(前年同期比39.8%増)、ランボルギーニ52台(73.3%増)、アストンマーチン47台(27%増)、BMWアルピナ61台(4.7倍増)と高い伸びを示した。
ベントレー43台(22.9%増)やロールスロイス26台(30%増)も売れており、購買意欲が底上げされているのがわかる。定番のベンツやBMW、アウディなども前年を上回っている。
なにしろ平均株価は、安倍政権誕生後の約4か月で40%超も上昇しているのだから、富裕層には相応の資産効果があるようだ。
2極化する消費者? 「アベノミクス、全体に波及していない」
売れ行きが好調な高額商品だが、百貨店は冷ややかだ。売り上げをけん引しているのが、多くの高級品を取り揃えている都心店にとどまるからだ。
三越伊勢丹HDの2013年4月の売上高は、伊勢丹新宿本店が3月のリニューアル効果もあって8.7%増、三越日本橋本店が1.0%増、三越銀座店3.8%増だったが、郊外店が振るわず全体では3.0%増だった。
J・フロントリテイリング(大丸松坂屋、前年同期比4.8%増)や阪急阪神百貨店(同10.3%増)でも同様の傾向がみられ、また東京・日本橋店が同5.1%と好調だった高島屋も全体では0.5%減、そごう・西武は2.3%減だった。
高級品は輸入ブランドが少なくない。急激な円安の進展で、海外ブランドは4月中旬以降に相次いで10%程度値上げした。そのため、「値上げ前にブランド品を購入する動きが、売り上げを膨らませた側面もある」(三越伊勢丹HD)という。
高島屋も、「(消費者の)すそ野が広がっているわけではありません。都心店は堅調ですが、食品や衣料品、日用品などを中心に扱う郊外店は苦戦が続いています」と、慎重な姿勢を崩さない。
「アベノミクス効果が、全体に波及しているとはいえません」(三越伊勢丹HD)