メガバンク、海外展開の強化急ぐ 欧州系の「出物」増も追い風に

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   三菱UFJフィナンシャルグループは2013年4月8日、ドイツ銀行から米国の不動産融資事業を約37億ドル(約3600億円)で買収すると発表した。

   安倍政権の経済財政政策「アベノミクス」により、国内景気の回復期待は高まっているが、人口減などから中長期的には国内はビジネスチャンス縮小も見込まれ、海外展開を強化する狙い。こうした動きは三井住友銀行など他のメガバンクにも広がっており、今後も加速しそうだ。

米国の地銀を傘下に

   三菱UFJは現在、米国の中堅地方銀行「ユニオンバンク」(本店・カリフォルニア州サンフランシスコ)を子会社として傘下に置く。ちなみに日本のメガバンクで米国地銀を傘下に置くのは三菱UFJだけだ。

   今回の買収案件は、このユニオンバンクを通じて、ドイツ銀行が手がける米国主要都市のオフィスビルなど、都市再開発事業などへの融資を買い取るものだ。買収によってユニオンバンクは、こうした商業用不動産への融資の分野で全米9位の規模に浮上するという。

   米国内での不動産ビジネスは、2008年のリーマン・ショックで壊滅的なダメージを受けたが、ここへ来て急速に回復しており、むしろ稼ぐ力のある事業となりつつある。今回、三菱UFJがドイツ銀行から買収する案件は、半分以上がリーマン・ショック後に組成されたもので、比較的質の良い物件とされる。

国内向けの融資増はまだ鈍い

   なお欧州債務危機やロンドン銀行間取引金利(LIBOR)不正操作問題の逆風下にある欧州系の金融機関は、体質強化に向けて中核的ではない事業の売却を進めている。欧州系では強い信用力を保つドイツ銀行も例外ではない。リーマン・ショックで受けた傷が浅かった日本のメガバンクは、こうした欧州系の「出物」の受け皿となっている面もある。実際、三井住友フィナンシャルグループなどが昨年、英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドから航空機リース事業を約5500億円で買収した実績もある。

   日本のメガバンク側にとっては、足元で進む円安基調によって、買収価格が高まることは気になるが、依然として「欧州系で売却が予想される物件は結構あり、海外強化の好機」(メガバンク幹部)でもある。

   ただ、慎重に出物を待って選んでいるだけでは、必ずしも海外展開の強化につながらない可能性もある。「2013年3月期に3メガバンクの最終利益が計2兆円に達し7年ぶりに高水準」とは伝えられるものの、内実は株高、債券高という市場要因によるものが大半だ。「黒田日銀」の大胆な金融緩和を受けて期待される国内向けの融資増も、少なくとも足元で活発になっているわけではない。このため、日本から地理的に近く、今後の成長が見込めるアジアをどう強化するか、という古くて新しい課題に正面から向き合う必要もありそうだ。

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