家電量販店最大手のヤマダ電機の山田昇会長(70)が5年ぶりに社長に復帰する。一宮忠男社長は代表権のある副社長に、14人の取締役はそれぞれ役職を1段階ずつ降格する。
2013年3月期の業績が上場後初めて2期連続で減収減益となったのを受けての措置で、業績悪化の責任を経営陣の一斉降格という異例の人事で明確にした。
予想配当を年間60円に、上場後初の減配
ヤマダ電機は山田昇会長の社長復帰と、一宮忠男社長の副社長、また2人の執行役員副社長を執行役員専務に、5人の執行役員専務を執行役員常務に、7人の執行役員常務を上席執行役員に1段階ずつ、一斉に降格する人事を4月30日に発表した。
就任は6月27日付。ただ、山田氏のCEO(最高経営責任者)、一宮氏のCOO(最高執行責任者)、役員の管掌部門の変更はない。
同社は4月22日に、13年3月期の業績見通しを下方修正した。売上高は従来予想の1兆7180億円から1兆7040億円(前期比7.2%減)と小幅な減額にとどまったが、本業の儲けを示す営業利益は従来の573億円から330億円(同63%減)に、また連結純利益は前期比62%減の220億円に、大きく減った。
それに伴い、13年3月期の1株あたりの予想配当も、従来予想より16円少ない60円(前期は76円)とする上場後初の減配となった。
ヤマダ電機は「山田会長は、今後は社長の立場で住宅などの新規事業から家電営業までをみていくことになります」と話している。
ヤマダ電機はここ数年、出店を加速するスケールメリットで収益の確保を目指してきたが思うようにいかなかった。苦戦の要因は、薄型テレビやブルーレイレコーダーなどのAV機器が予想以上に低迷したうえ、パソコンなど情報機器が伸び悩んだためだ。
なかでも国内の薄型テレビの販売台数は、2009年ごろからエコポイント制度やアナログ停波による「特需」で急伸。一時は2500万台を超える販売台数となったものの、結果的に数年分の需要を「先食い」しただけだった。
市場調査のジーエフケー マーケティングサービス ジャパンによると、2012年の薄型テレビの販売台数は837万台と、前年を60%も下回る結果となった。
中国市場も大誤算
ヤマダ電機にとっては、中国事業の不振もある。とくに2012年3月にオープンしたばかりの南京店を閉店せざるを得なかったのは、尖閣問題での反日デモ以前には「積極出店」の意向をもっていただけに、大きな誤算だろう。
同社はサプライチェーンの構築が思うように進まなかったことによる販売不振が原因という。南京店は5月末で閉鎖。それに伴う損失は未定だ。閉鎖後は他社との資本業務提携や店舗譲渡などを模索する。一方、瀋陽店と天津店については営業を続ける。
とはいえ、家電量販店の販売不振はヤマダ電機に限らない。エディオンや「ケーズデンキ」のケーズホールディングス(HD)も置かれている状況は同じだ。
エディオンは2013年5月1日、13年3月期の業績予想を下方修正したと発表。連結売上高は7200億円から6851億円(前期比9.8%減)、営業損益は30億円の黒字から24億円の赤字に(前期は92億円の黒字)、当期損益は30億円の黒字から27億円の赤字(同36億円の黒字)となった。期末予想配当の10円は変更していない。
業績悪化を受けて12年10月から実施している役員報酬の減額を継続する。
また、ケーズHDは13年3月期の売上高を6600億円(前年比9.1%減)、営業利益は199億円(同41.7%減)、当期純利益は144億円(同39.4%減)を見込んでいる。
好調だったエアコンや冷蔵庫、クリーナーなどが、薄型テレビなどの売上げ減をカバーできないでいる。